運動の効果を帳消しにする身近な薬:抗ヒスタミン薬

身体活動

はじめに

日常的にアレルギー薬や胃薬を服用しながら、健康維持や体力向上のために汗を流している方は少なくないはずです。運動が心血管疾患や代謝性疾患の強力な予防・治療手段であることは広く知られていますが、その恩恵を私たちが受ける際、体内でどのような分子伝達が行われているのかについては未解明の領域が多く残されていました。

今回ご紹介する研究は、ごくありふれた市販薬の成分であるヒスタミンH1受容体およびH2受容体の拮抗薬が、運動によって得られる毛細血管の新生、ミトコンドリア機能の強化、全身のインスリン感受性の向上といった適応現象を広範に阻害してしまうことを突き止めた論文です。アレルギー性鼻炎や胃酸過多のコントロールのために何気なく選んでいる内服薬が、実は日々のトレーニングの成果を著しく減弱させているかもしれないという、臨床的にも運動生理学的にも非常にインパクトの大きい事実を提示しています。

本研究のデザインとプロトコール概要(PICO)

研究デザイン:無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(急性影響を検証する単盲検クロスオーバー試験を併載)

P(対象):健常成人男性(慢性介入試験は20名が参加し、各群1名が脱落したため、最終解析は対照群9名、遮断群9名の計18名。急性試験は8名)

I(介入):6週間の高強度インターバルトレーニング(週3回)の各セッション開始1時間前に、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(フェキソフェナジン540 mg)およびH2受容体拮抗薬(ラニチジン300 mgまたはファモチジン40 mg)を経口投与

C(対照):同一のトレーニングセッション1時間前にプラセボカプセルを経口投与

O(主要評価項目):運動耐容能指標、単一受動的下肢運動(single passive leg movement;sPLM)による微小血管内皮機能、経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test;OGTT)によるインスリン感受性、筋生検組織における毛細血管新生および各種シグナル伝達タンパク質・代謝酵素活性の変化

既存研究に対する本研究の新規性

運動中や運動後に血中ヒスタミン濃度が上昇すること、ならびに運動終了後に持続する筋肉の充血(持続的運動後充血)にH1およびH2受容体が関与していること自体は、これまでの急性運動研究でも知られていました。また、急性運動後の筋組織における遺伝子発現応答にヒスタミン受容体が関わっていることも報告されていました。

しかし、これらの急性応答が慢性的な運動トレーニングの適応、すなわち筋毛細血管の新生、ミトコンドリアの生合成、全身の血糖代謝の改善といった長期的な機能向上に本当に必要なのかどうかは完全に未知でした。本研究は、ヒトを対象とした長期介入試験においてヒスタミンH1受容体およびH2受容体を同時に遮断することで、運動トレーニングによる複数の器官系の適応が包括的に損なわれることを世界で初めて証明しました。単一の受容体経路をブロックするだけで、運動がもたらす広範な適応メカニズムが破綻することを示した点が、従来の生理学的な常識を覆す極めて新規性の高い発見です。

急性運動後の筋灌流をヒスタミン受容体が支える

まず著者らは、インターバルサイクリング運動直後から2時間後までの下肢血行動態を検証しました。プラセボ投与条件下では、運動終了15分後において大腿動脈の筋灌流は安静時基準値の約3倍にまで跳ね上がり、受動的な安静状態を維持しても2時間後になお基準値より約50%高い水準を維持していました。

ところが、H1およびH2受容体遮断薬を事前に投与した条件下では、運動中や安静時の心拍数、血圧、動脈径に有意な差はみられなかったものの、運動後2時間における総筋灌流(iAUC:曲線下面積の増加分)が約35%も有意に減少しました(P = 0.015)。血管コンダクタンスの上昇も顕著に抑制されていました。
つまり、インターバル運動後に筋肉へと持続的に血液を送り届ける血管拡張反応は、運動誘発性に遊離したヒスタミンが血管内皮のH1受容体および血管平滑筋のH2受容体に結合することによって直接制御されていることが確認されたのです。

慢性運動:6週間のトレーニングがもたらす運動能力への影響と解離

続いて行われた6週間の慢性介入試験では、参加者全員が同一強度のインターバルトレーニングを完遂しました。トレーニング強度や遵守率には両群間で一切の差はありませんでした。

最大酸素摂取量(VO2max)は有意差なし

得られた結果の中で最も興味深い点の一つは、最大運動能力と最大下運動能力(持久性指標)における受容体遮断の影響の解離です。心肺機能の全体像を反映する最大酸素摂取量(VO2max)は、プラセボ対照群で+3.9%、受容体遮断群で+0.3%と、両群ともに軽微な増加にとどまり、統計学的な有意差は認められませんでした(P = 0.208)。これは、VO2maxが主に心拍出量などの心臓中心性の酸素供給能に依存するため、6週間の介入では差が顕在化しにくかったと考えられます。

末梢骨格筋の代謝適応が低下

しかし、末梢骨格筋の代謝適応を色濃く反映する指標では、極めて明確な差がつきました。

最大仕事率(ピークパワー)

漸増負荷試験における最大仕事率(ピークパワー)の向上率は、対照群の+12%に対し、遮断群では+7%と有意に劣っていました(P = 0.044)。
最大仕事率(ピークパワー)とは、徐々にペダルが重くなる自転車テストで「もうこれ以上は踏めない」という限界まで追い込んだときに出せた最大のワット数です。
通常(対照群)ならトレーニングによって12%分余計に強い負荷まで耐えられるようになりますが、薬を飲んでいた群は7%しか伸びませんでした。限界値の底上げ効果が約4割削られた計算になります。

ガス交換閾値(GET)・呼吸代償点(RCP)

さらに、換気性作業閾値であるガス交換閾値(gas exchange thresholdGET)は対照群で+22%、遮断群で+11%(P = 0.006)、呼吸代償点(respiratory compensation pointRCP)は対照群で+19%、遮断群で+6%(P < 0.001)となり、持久力の境界値の上昇が遮断群で著しく抑え込まれていました

GETやRCPは、運動中にエネルギーの供給方法が切り替わる「境界線(持久力の指標)」です。

  • ガス交換閾値(GET:いわゆる第1換気性作業閾値/乳酸性作業閾値LTに近い指標)
    • 「楽〜ややきつい」と感じる有酸素運動の限界ラインです。これを超えると乳酸が溜まり始め、呼吸が少しずつ荒くなります。
    • 対照群はこれが+22%も引き上がり、「かなり速いペース・強い負荷でも、楽に有酸素運動を続けられる身体」に進化しました。
    • しかし遮断群は+11%にとどまり、成長幅が半分になりました。
  • 呼吸代償点(RCP:いわゆる第2換気性作業閾値)
    • 「ここを超えたら急激に過換気になり、数分でバテて動けなくなる」という限界直前のレッドゾーンの境界線です。
    • 対照群は+19%高くなり、ギリギリの強度で粘れる領域が大きく広がりました。
    • 対する遮断群はわずか+6%しか上がらず(対照群の3分の1以下)、レッドゾーンに入るタイミングがトレーニング前とあまり変わらないままでした。
疲労困憊に至るまでの持続時間(TTE)

疲労困憊に至るまでの持続時間(time to exhaustionTTE)の延長も、対照群の+81%に対して遮断群は+31%にとどまりました。

疲労困憊に至る時間(TTE)は、限界に近い高強度(最大仕事率の90%)でペダルを回し続け、何分何秒耐えられるかを測るテストです。
対照群は粘れる時間が+81%延長(ほぼ1.8倍長く漕げるようになった)のに対し、遮断群は+31%しか伸びませんでした。

末梢性の持久力適応が低下

また、一定の低強度(150 W)で自転車を漕ぐ定常状態運動試験において、対照群では平均心拍数が−9%低下し、消費エネルギー量も有意に減少して運動効率が改善したのに対し、遮断群では心拍数もエネルギー消費量も有意な変化を示しませんでした(エネルギー消費量の群間差 P = 0.019)。

ヒスタミン受容体の働きを止めることで、トレーニングによる末梢性の持久力適応が大幅に妨げられたことがわかります。

分子生物学的適応:ミトコンドリアと抗酸化機構の破綻

骨格筋生検から得られた生化学的データは、上述の運動能力の低下を裏付ける明確な分子動態を示していました。

筋肉のミトコンドリア量(クエン酸合成酵素(CS)活性)

筋肉のミトコンドリア量を反映する代表的な指標であるクエン酸合成酵素(citrate synthase;CS)活性は、対照群において+33%という大幅な上昇を示したのに対し、遮断群では+14%の上昇にとどまりました(交互作用 P = 0.027)。

活性酸素種(ROS)の産生と抗酸化防御のバランス

さらに決定的な違いが認められたのが、活性酸素種(reactive oxygen species ;ROS)の産生と抗酸化防御のバランスです。運動トレーニングを行うと、細胞膜に存在するNADPH酸化酵素(NADPH (reduced form of nicotinamide adenine dinucleotide phosphate) oxidase ;NOX)が増加し、活性酸素の発生源となります。本研究でも、NOXのサブユニットであるp67phoxタンパク質の発現量は、対照群で+61%、遮断群で+63%と、両群で同等に増大していました。

対照群では、この酸化ストレス刺激に適応する形で、ミトコンドリアに局在する強力な抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ2(superoxide dismutase 2;SOD2)のタンパク質量が+56%と大幅に増加していました(P < 0.001)。ところが驚くべきことに、ヒスタミン受容体を遮断したグループでは、SOD2の増加がわずか+18%にとどまり、有意な誘導が起こりませんでした(交互作用 P = 0.023)。
つまり、受容体遮断下でトレーニングを行うと、酸化ストレス源だけが増加し、それを消去する抗酸化防御の適応が置き去りにされるという、筋細胞にとって極めて不利なレドックス状態が引き起こされていたのです。

解糖系の酵素活性

解糖系の酵素活性にも影響が及びました。解糖系の重要な律速段階を司るホスホフルクトキナーゼ(phosphofructokinase;PFK)活性は、対照群で+13%上昇したのに対し、遮断群では全く変化がみられませんでした(P = 0.036)。
一方、脂肪酸酸化に関与するヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(Hydroxyacyl–coenzyme A dehydrogenase;HAD)の活性は両群ともに同等に向上していたことから、ヒスタミンシグナルはエネルギー基質経路の中でも特定の代謝経路の適応に関与していることが推察されます。

糖代謝恒常性とインスリン感受性の向上消失

運動療法が糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善に不可欠であることは常識ですが、この代謝適応もまたヒスタミン受容体に依存していました。

75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施したところ、対照群では空腹時血糖値が有意に低下し、負荷後の血糖AUCは−11%(P = 0.036)、インスリンAUCは−30%(P = 0.002)とともに大幅に減少し、少ないインスリン分泌で効率よく糖が処理される状態へと変化していました。全身のインスリン感受性の指標であるMatsuda indexは、対照群で+26%という劇的な改善を記録しました(P < 0.001)。

ところが、ヒスタミン受容体遮断群では、この代謝的恩恵が完全に失われていました。血糖AUCは+1%、インスリンAUCは−3%と微動だにせず、Matsuda indexの改善率はわずか+1%と、プラセボ群と明瞭な差がつきました(交互作用 P = 0.010)。

ここで興味深い分子機構が明らかになっています。骨格筋における主要なインスリン感受性糖輸送体であるGLUT4の総タンパク質発現量をウェスタンブロット法で定量したところ、対照群で+17%、遮断群で+16%と、両群ともに全く同等に増加していたのです。従来の単純な見方では、GLUT4タンパク質が増加すればインスリン感受性も改善すると予想されがちです。しかし本研究の結果は、GLUT4の発現量を増やすだけでは全身の糖処理能の向上には不十分であり、受容体遮断群では別の必須因子が欠落していたことを物語っています。

微小血管の新生不全と一酸化窒素経路の障害

GLUT4が増加したにもかかわらずインスリン感受性が改善しなかった理由、そして持久力が向上しなかった理由の核心は、微小循環系の適応不全にありました。

下肢の受動的運動(sPLM)を用いた一酸化窒素(NO)依存性の血管拡張機能検査では、対照群の血流増加反応(iAUC)がトレーニング後に+37%と顕著に向上したのに対し、遮断群では−14%とむしろ低下傾向を示しました(P = 0.293)。

筋組織の切片を蛍光染色して毛細血管の数を測定したところ、対照群では毛細血管−筋線維比が+17%、毛細血管密度が+16%と明確な血管新生が確認されました。しかし遮断群では、毛細血管−筋線維比が+5%、毛細血管密度は−1%となり、毛細血管の増加が完全に阻害されていました。

血管内皮細胞において血管拡張物質NOを産生する内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase;eNOS)のタンパク質発現量も、対照群では+17%増加したのに対し、遮断群では増加が認められませんでした(P = 0.017)。なお、血管新生の主要な液性因子である血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)の筋内タンパク質濃度は、対照群で+29%、遮断群で+23%とともに上昇していました。

以上のデータから浮かび上がるメカニズムは非常に明快です。運動直後にヒスタミン受容体を介して生じる筋血流の増加は、毛細血管壁に強い物理的なせん断応力(シアー・ストレス)を与えます。このシアー・ストレスこそが、内皮細胞の分裂や血管新生、eNOSのリン酸化および発現誘導を駆動する強力な生体シグナルとなっています。ヒスタミン受容体をブロックすると、運動後の持続的充血が失われ、十分なシアー・ストレスが得られないため、VEGFが十分に分泌されていても血管新生がストップし、eNOSも増えず、毛細血管網が発達しません。その結果、インスリンやブドウ糖を骨格筋の深部まで運搬する経路が確保されず、GLUT4が増えても全身のインスリン感受性が向上しなかったと考えられます。

研究の限界(Limitation)

本研究を臨床現場や個人の生活に応用する際には、以下の限界点を踏まえておく必要があります。

第一に、対象が若年成人男性の健常者のみで構成されている点です。女性ホルモンの影響を受ける女性や、高齢者、すでに糖尿病や高血圧などを患っている患者群において、同様の阻害効果が同等の規模で生じるかは直接確認されていません。

第二に、慢性介入試験のサンプルサイズが各群9名と小規模である点です。これによって検出力の限界が存在し、VO2maxなどの一部の指標で差が検出できなかった可能性が残ります。

第三に、本研究ではH1受容体拮抗薬とH2受容体拮抗薬を同時に高用量で併用投与しているため、H1受容体の阻害とH2受容体の阻害のどちらが主たる原因なのか、あるいは片方のみの単独投与でも同様の現象が起きるのかが分離できていません。

第四に、受容体遮断が適応を不可逆的に消失させたのか、それとも刺激の用量反応曲線を右方にシフトさせたに過ぎないのか(すなわち、より強い負荷や長期のトレーニングを行えば代償されるのか)という点については、さらなる検討が必要です。

明日からの生活と臨床にどう活かすか

本研究の知見は、運動による健康増進やパフォーマンスアップを目指すすべての人にとって、見過ごすことのできない実践的な示唆を与えてくれます。

アレルギー性鼻炎、花粉症、蕁麻疹などで第二世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジンなど)を内服している方や、逆流性食道炎・胃炎の治療でH2受容体拮抗薬(ファモチジンなど)を服用している方は非常に多いはずです。

もしあなたが、糖尿病予防、血圧管理、減量、あるいは持久力向上を目的として意識的に運動を行っているのであれば、これらの薬剤を服用するタイミングに注意を払う価値が十分にあります。本研究では運動の1時間前に薬剤を内服し、血中濃度がピークに近い状態で運動とその後の回復時間を迎えていました。

薬物動態学的な観点から考えれば、運動直前や運動直後の時間帯にヒスタミン受容体拮抗薬が最高血中濃度を迎える状況を避けることが賢明です。例えば、1日1回服用の抗ヒスタミン薬であれば、運動を行う時間帯から最も遠い時間(夜間に運動する人であれば朝、朝に運動する人であれば就寝前など)に服薬タイミングをずらす、あるいは胃症状に対しては作用機序の異なるプロトンポンプ阻害薬(PPI)や消化管運動改善薬への変更を担当医と相談するといった工夫が考えられます。

運動は単に体を動かしてカロリーを消費するだけの行為ではなく、体内で複雑な分子シグナルと血流応答を連動させて体を再構築する統合的な刺激です。薬物と運動の相互作用を正しく理解し、運動直後の自然な血管反応を邪魔しない環境を整えることこそが、日々のトレーニング効果を余すところなく享受するための重要な戦略となります。

参考文献

Van der Stede, T., Blancquaert, L., Stassen, F., Everaert, I., Van Thienen, R., Vervaet, C., Gliemann, L., Hellsten, Y., & Derave, W. (2021). Histamine H1 and H2 receptors are essential transducers of the integrative exercise training response in humans. Science Advances, 7(16), eabf2856.

おまけ:ヒスタミンH1・H2受容体の拮抗薬それぞれ単独での影響は?

片方のみの服用でも、運動効果が部分的に減弱する可能性は考えられます。

受容体の分布と血管拡張の役割分担

骨格筋の微小循環において、ヒスタミンH1受容体とH2受容体はそれぞれ異なる部位に発現しています。

  • H1受容体:主に毛細血管や細動脈の「血管内皮細胞」に存在し、一酸化窒素(NO)などの産生を介して血管を拡張させます。
  • H2受容体:主に「血管平滑筋細胞」に存在し、平滑筋を直接弛緩させて血管を広げます。

運動後の持続的な血流増加(充血)は、この内皮(H1)と平滑筋(H2)の両経路が連動して作り出されています。したがって、片方をブロックするだけでも血管拡張シグナルの一部が遮断され、運動後の血流増加(せん断応力)が十分に得られなくなるリスクが生じます。

本論文の限界(Limitation)

  • この論文の実験では、H1拮抗薬(フェキソフェナジン)とH2拮抗薬(ラニチジンまたはファモチジン)を同時に高用量投与しています。
  • そのため、著者ら自身もLimitation(限界点)として挙げている通り、「H1単独、あるいはH2単独の遮断でどの程度同じ障害が起きるのか」は本研究プロトコール内では分離検証されていません。

臨床的・生理学的な推定

両受容体は互いを完全に代償できるわけではないため、片方のみの服用であっても、二重遮断ほどの完全な消失には至らないまでも、「運動後の筋血流増加の鈍化」やそれに伴う「毛細血管新生・ミトコンドリア適応の部分的な抑制」が用量依存的・血中濃度依存的に生じる可能性は否定できません。

単独遮断(H1受容体のみ、あるいはH2受容体のみ)の影響を調べた研究

「数週間にわたる長期の運動トレーニング適応(毛細血管新生やインスリン感受性の恒常的向上など)」を評価した長期介入研究は現時点でも極めて限られており、多くは「単回の運動直後の血流や血管拡張反応」を調べた急性運動生理学の分野で検証されています。

実在する代表的な論文として、例えば以下の先行研究があります。

McCord JL, Halliwill JR. H1 and H2 receptors mediate postexercise hyperemia in sedentary and endurance exercise-trained men and women. Journal of Applied Physiology. 2006;101(6):1693-1701.

この研究では、運動後に持続する筋充血(血流増加)に対して、H1受容体拮抗薬(フェキソフェナジン)単独、H2受容体拮抗薬(ラニチジン)単独、および両者の併用投与を行い、それぞれの寄与度を比較検証しています。

この論文で示された主な知見は以下の通りです。

  1. 単独遮断でも血流増加は部分的に抑制される
    運動後の血管拡張(血管コンダクタンスの上昇)は、H1ブロッカー単独の投与、あるいはH2ブロッカー単独の投与のいずれにおいても有意に減弱しました。
  2. 両受容体は相加的・協調的に働く
    H1受容体とH2受容体の両方を同時にブロックしたときに最も強力な血流抑制効果がみられ、片方のみの遮断では抑制効果は部分的(不完全)にとどまりました。
  3. どちらか一方だけでは代償しきれない
    H1受容体(主に血管内皮でのNO産生など)とH2受容体(血管平滑筋の直接弛緩)は作用機序が異なるため、片方を止めた場合、もう片方の受容体だけでは運動後の充血を100%維持することはできませんでした。
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