心臓血管

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下大静脈の変化は、静脈圧の変化よりも鋭敏である

はじめに:静脈の「かたち」に注目する 心不全による入院の半数以上が急性増悪(ADHF)によるもので、医療経済的にも大きな負担となっています。心不全におけるうっ血は、病態進展と再入院を繰り返す大きな要因であり、的確なうっ血の評価は治療方針の決...
心臓血管

下大静脈センサーによる心不全の遠隔管理:FUTURE-HF試験

はじめに:うっ血性心不全における新たなモニタリング技術の可能性 心不全(heart failure, HF)の急性増悪、特にうっ血性増悪は、再入院や死亡リスクの主要因であり、慢性心不全管理における最大の課題の一つです。臨床所見のみではうっ血...
医療全般

臓器移植と性格変化 ―心臓移植だけではない「人格の移行」の可能性

はじめに:移植と自己同一性をめぐる問い 臓器移植は、生命を救う医療技術の象徴である一方で、移植後の患者が経験する心理的・感情的な変化については、長らく科学的議論の余地が残されてきました。なかでも注目されてきたのが「性格変化」です。とくに心臓...
心臓血管

心臓に宿る記憶、嗜好【真実か?単なる逸話か?】

はじめに:記憶は脳だけに宿るのか? 現代医学は、記憶や学習の機能を基本的に中枢神経系、特に大脳皮質や海馬といった脳構造に帰属させてきました。しかしこの常識に一石を投じるのが、2000年に発表されたPearsallらによる本研究です。本論文は...
心臓血管

【仮説】心臓は単なるポンプなのか?―心臓と感情のつながり

はじめに:感情の臓器としての「心」 心臓は古くから「感情の座」として文学や哲学に登場してきました。しかしながら、科学的には長らく「単なるポンプ」と見なされ、感情や認知機能は主に脳の領域、特に扁桃体や海馬に限定されてきました。本稿で紹介する論...
依存症

慢性的な大麻使用が血管内皮機能に及ぼす影響

はじめに 大麻の合法化が進む現在、その使用は医療・嗜好の両面で広がりを見せています。一般的には「タバコよりも安全」「自然由来で身体に優しい」といった印象を持たれがちですが、心血管系に与える影響についての科学的エビデンスはまだ十分とは言えませ...
心臓血管

食塩・ナトリウム摂取量と心血管疾患、血圧の関連を示した臨床試験

疫学研究(コホート研究)の知見 疫学研究、特に前向きコホート研究では、食塩・ナトリウム摂取量と心血管疾患リスクの関連が比較的一貫して示されています: Strazzulloらによる13の前向き研究(約17.7万人)のメタ分析では、高い塩分摂取...
心臓血管

終末糖化産物 AGEsと心血管疾患

はじめに 終末糖化産物=Advanced Glycation End Products(AGEs)は、タンパク質、脂質、核酸が非酵素的に糖化・酸化されることによって生成される多様な分子群です。 AGEsは、細胞内および細胞外マトリックスのタ...
心臓血管

動脈スティフネス arterial stiffness:血管老化のサイン

動脈スティフネス(arterial stiffness, AS)は、血管壁の弾性喪失を特徴とする病態であり、単なる加齢現象ではなく、慢性腎疾患(CKD)や糖尿病、高血圧といった病態と密接に関係する心血管リスクの早期マーカーです。本稿では、T...
心臓血管

「動脈硬化」とは?意外と難しいその概念

はじめに:同じ「動脈硬化」でも、意味が異なる 「動脈硬化」という言葉は医療現場で日常的に使われていますが、その裏に含まれる病理学的意味は一様ではありません。Santosらは2021年の論文「Arteriosclerosis, atheros...