超加工食品の心血管への悪影響は、内臓脂肪と慢性炎症が媒介する

食事 栄養

はじめに:日常に潜む超加工食品と心血管の危機

私たちが日常的に手にするスナック菓子、菓子パン、清涼飲料水、冷凍ピザ、加工肉といった食品は、現代の食生活に深く浸透しています。米国では成人の総エネルギー摂取量の半分以上を超加工食品(Ultraprocessed foods: UPF)が占めるに至っており、日本を含む世界各国でもその消費量は増加の一途をたどっています。

これまでの疫学的知見から、UPFの摂取量が増えるほど心血管疾患(CVD)の発症リスクが有意に上昇することは広く知られていました。しかし、「なぜ加工度の高い食品を食べ続けると心臓や血管が蝕まれるのか」という核心的な問いに対する生物学的な経路、すなわち病態の媒介プロセスについては、推測の域を出ていない部分が多く残されていました。

2026年にJACC: Advances誌に発表された本研究は、多民族コホートの長期追跡データを用い、高度な統計手法である媒介分析を駆使して、UPFがどのような体内経路を経て心血管イベントを引き起こすのかを解き明かした画期的な論文です。本稿では、この研究が提示した知見を紐解き、分子・病態生理学的な視点から臨床応用、そして私たちが明日から実践できる生活戦略までを解説します。

研究プロトコールの概要と新規性

本研究の最大の強みは、観察された相関関係の背後にある中間媒介因子を、因果媒介分析によって切り分けた点にあります。これまでの研究が「UPF摂取とCVD発症の関連」という入口と出口の観察に留まっていたのに対し、本研究は「体内における中間経路(身体組成、炎症、代謝指標)」の寄与度を定量化しました。

研究デザイン:多民族の一般地域住民を対象とした前向きコホート研究(MESA研究)

本研究のPECOフレームワークは以下の通りです。

P(対象患者):ベースライン時に臨床的に明らかな心血管疾患を有さない45歳から84歳の男女6,531人

E(曝露):Nova分類に基づく超加工食品(UPF)の日常的摂取量(サービング/日)

C(比較対照):UPFの低摂取群、あるいは1サービング/日の摂取量差

O(主要評価項目):追跡期間中に発生したハード心血管イベント(非致死性心筋梗塞、蘇生された心停止、冠動脈疾患死、非致死性脳卒中、脳卒中死の複合)

解析では、一般化構造方程式モデリング(GSEM)と反事実モデルに基づく因果媒介分析という相補的な2つのアプローチを適用し、結果の頑健性を担保しています。

追跡データが明かす臨床プロファイル

本研究では、ベースライン登録時の6,531人を中央値16.7年間(四分位範囲11.2〜17.5年、総計92,718人年)にわたり追跡し、期間中に809件のハードCVDイベントが確認されました。

参加者のUPF摂取量を四分位数(Q1からQ4)で層別化すると、摂取量が増加するにつれて、被験者の背景や代謝プロファイルに明瞭な乖離が観察されました。

UPFの平均摂取量

UPFの平均摂取量は、第1四分位群(Q1)で1日あたり1.31±0.54サービングであったのに対し、第4四分位群(Q4)では8.67±3.06サービングに達していました。

摂取量が多い群ほど若年で、男性の割合が高い

年齢に関して、Q1群の平均が62.91±10.22歳であったのに対し、Q4群は60.24±10.12歳と、摂取量が多い群ほど若年で、男性の割合が高くなっていました(Q1の男性割合21.40%に対し、Q4は28.35%)。

UPFの摂取量が増えるほど体重増加・脂肪蓄積

身体組成を比較すると、UPFの摂取量が増えるほど明らかな体重および脂肪の蓄積が見られました。体重はQ1の71.65±16.42 kgからQ4の85.05±17.50 kgへと段階的に増大し、腹囲は94.17±14.05 cmから102.19±14.80 cmへ、ウエスト・身長比(WHtR)は0.57±0.09から0.61±0.09へと顕著に上昇していました。生体電気インピーダンス法から算出した体脂肪量も24.42±10.34 kgから29.50±11.69 kgへ、BMIは26.89±5.29 kg/m2から29.72±5.70 kg/m2へと上昇しており、いずれも統計学的に極めて有意でした(p<0.001)。

UPF摂取量に伴い炎症マーカーの上昇

さらに注目すべきは全身性炎症マーカーの上昇です。インターロイキン-6(IL-6)はQ1の1.46±1.19 pg/mLからQ4の1.63±1.20 pg/mLへと上昇し(p<0.001)、C反応性蛋白(CRP)も3.27±5.70 mg/Lから4.02±5.77 mg/Lへと高値を示しました(p=0.002)。可溶性IL-2受容体や可溶性TNF-α受容体といった他の炎症指標も、UPF摂取量に伴って有意に高値となっていました。

UPF摂取量に伴う代謝指標の変化

一方、代謝指標において、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールはQ1の51.72±15.40 mg/dLからQ4の49.11±13.00 mg/dLへと有意に低下し(p<0.001)、リポ蛋白インスリン抵抗性(LPIR)スコアは41.16±23.32から47.31±23.12へと有意に悪化していました(p<0.001)。

しかし驚くべきことに、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール(Q1: 117.09 mg/dL、Q4: 117.96 mg/dL、p=0.595)、中性脂肪(Q1: 134.35 mg/dL、Q4: 132.45 mg/dL、p=0.257)、総コレステロール、酸化LDL、空腹時血糖、収縮期血圧には、UPF摂取四分位群間で有意な差が認められませんでした。

多変量回帰から浮き彫りになる直接的影響

年齢、性別、人種、教育歴、世帯収入、喫煙歴(パック年)、身体活動量、そして総摂取エネルギー(kcal/日)を調整した多変量線形回帰モデルにおいて、UPFの1サービング/日の増加に伴う各生体指標の変動が検証されました。

身体組成指標

UPF摂取量の増加は、
・腹囲(β=1.104 cm、95% CI: 0.926〜1.282、p<0.001)
・ウエスト・身長比(β=0.006、95% CI: 0.005〜0.007、p<0.001)
・体脂肪量(β=0.786 kg、95% CI: 0.661〜0.912、p<0.001)
・BMI(β=0.395 kg/m2、95% CI: 0.329〜0.461、p<0.001)
と、すべての身体組成指標において極めて強い正の相関を示しました。総摂取カロリーで調整しているにもかかわらずこの関連が残るという事実は、UPFの影響が単なるカロリーオーバーだけでなく、食品の特性自体に起因している可能性を示唆しています。

炎症マーカー

炎症マーカーについても、UPF摂取の増加は
・IL-6(β=0.038 pg/mL、95% CI: 0.023〜0.054、p<0.001)
・CRP(β=0.110 mg/L、95% CI: 0.037〜0.183、p=0.003)
・可溶性IL-2受容体(β=16.17 pg/mL、p=0.001)
・可溶性TNF-α受容体(β=19.64 pg/mL、p<0.001)
の上昇と有意に結びついていました。

代謝関連指標

代謝関連ではHDLコレステロールの有意な低下(β=−0.256 mg/dL、95% CI: −0.432〜−0.080、p=0.004)が確認されたものの、収縮期血圧、拡張期血圧、LDLコレステロール、中性脂肪、空腹時血糖、空腹時インスリン値とは有意な関連を示しませんでした。

病態を解き明かす媒介分析:中心性肥満とIL-6の寄与

この研究の核心は、超加工食品(UPF)を多く摂ると、なぜ心血管疾患(CVD)のリスクが上がるのか、体の中でどの因子が中継役(媒介因子)になっているかを数値で突き止めた点です。

2大中継役:内蔵脂肪と慢性炎症

解析の結果、UPFが心血管疾患を引き起こすルートのほぼ半分(47%)は、「内臓脂肪の蓄積」と「慢性炎症(IL-6)」という2つの中継役を通っていることがわかりました。

・内臓脂肪(ウエスト・身長比):全体の38%を仲介

UPFを摂ると内臓脂肪が増え、その脂肪が血管を傷つけるメインルートです。

・慢性炎症(IL-6):全体の9%を仲介

UPFによって体内で炎症性サイトカイン(IL-6)が放出され、血管の障害を促すサブルートです。

これら2つのルートを合わせると47%に達し、中継役を通さない直接の悪影響(直接効果)は統計的に意味のないレベルまで低下しました。つまり、UPFによる害の半分は、この「内蔵脂肪」と「炎症」に集約されます。

他の指標との比較:なぜ血圧やコレステロールではないのか

他の中継役候補についても調べたところ、以下のような違いが浮き彫りになりました。

・体格・脂肪の指標(主犯格)

ウエスト・身長比に限らず、腹囲(52%)、体脂肪量(46%)、BMI(43%)のいずれで見ても、4割から5割の悪影響を仲介していました。心血管リスクを押し上げる最大の要因は、明らかに体脂肪の増加です。

・炎症マーカー

IL-6が確かな中継役(13%)として機能していたのに対し、健康診断でよく使われるCRPはわずか5%にとどまり、その他の炎症マーカー(可溶性IL-2受容体やTNF受容体など)は有意な中継役にはなっていませんでした。UPFに関連する炎症経路としては、特にIL-6が重要な鍵を握っています。

・代謝・血液の指標(脇役)

善玉であるHDLコレステロールの低下が仲介していた割合は9%にとどまりました。さらに、悪玉のLDLコレステロールや血圧、インスリン抵抗性などは、独立した中継役としては機能していませんでした。これらは脂肪蓄積や炎症の結果として後から付随して現れる変化であり、根本的な引き金ではないと考えられます。

別の統計手法(反事実モデル)で検証し直しても、内臓脂肪が約4割、IL-6が約1割を仲介するという割合はまったく揺らぎませんでした。UPFが心臓や血管を蝕む主ルートは、何よりも「内臓脂肪を増やし、IL-6による炎症をくすぶらせること」にあると言えます。

分子生物学的考察:なぜ内臓脂肪とIL-6なのか

本論文が提示した逐次媒介分析の結果は、生体内で起きているメカニズムを考える上で重要な視座を与えてくれます。「UPF摂取 → ウエスト・身長比の増大 → IL-6の上昇 → CVD発症」という一連の経路を解析したところ、この経路の間接効果はβ=0.0016(95% CI: 0.0004〜0.0027)と統計学的に有意であり、全効果の約6%を説明しました。

この逐次経路を考慮したモデルでは、ウエスト・身長比単独の間接効果(38%)は維持された一方、ウエスト・身長比から完全に独立したIL-6単独の残余経路は3%(β=0.001、95% CI: −0.0001〜0.0020)へと減弱しました。

このデータは、UPFによって誘発される全身性炎症の相当部分が、中心性脂肪の過剰蓄積の下流として生じていることを物語っています。内臓脂肪組織の拡大は、脂肪組織内の局所的な低酸素状態、アディポサイトカイン分泌異常、マクロファージの浸潤を惹起し、強力な炎症性サイトカインであるIL-6の持続的放出をもたらします。血中を循環するIL-6は肝臓での急性期蛋白合成を刺激するのみならず、血管内皮細胞の機能障害を誘導し、単球の接着や動脈壁への遊走を促してアテローム動脈硬化の形成とプラーク不安定化を加速させます。

しかし同時に、本研究のデータは脂肪蓄積を介さない独立した炎症経路の存在も示唆しています。UPFは、精製された単純糖質や飽和脂肪酸、さらには乳化剤、着色料、香料といった多彩な食品添加物を含有しています。これらの成分は消化管において腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)を引き起こし、腸管バリア機能を破綻させることが基礎研究から指摘されています。管腔内から微量漏出したエンドトキシンや刺激物質は、自然免疫系の受容体を活性化し、酸化ストレスを惹起し、炎症関連遺伝子の転写プロセスを直接誘導して、脂肪蓄積とは独立した低悪性度慢性炎症の火種を燻らせ続けると考えられます。

対照的に、LDLコレステロールや血圧、インスリン抵抗性が有意な媒介因子として浮上しなかった点について、著者らはこれらが中心性肥満の下流に位置する二次的変化であるか、あるいは重複する生理学的経路を反映しているため、肥満と炎症を調整したモデルでは独立した媒介効果が検出されにくかったと考察しています。

本研究の限界(Limitation)

本研究の成果を臨床や実生活へ解釈するにあたっては、いくつかの制限事項を念頭に置く必要があります。

第一に、食事内容の評価および各バイオマーカーの測定が、ベースライン時の1時点のみで行われている点です。追跡期間中の食習慣の変化や、体重・炎症マーカーの経時的変動を完全には捉えきれておらず、測定誤差や個人内変動によって真の間接効果や媒介割合が過小評価されている可能性があります。

第二に、本研究が前向き観察研究であるため、未知または未測定の交絡因子の影響を完全に排除することは原理的に不可能です。媒介分析は曝露、媒介因子、アウトカムの間に未測定の交絡がないという強い仮定に基づいています。

第三に、統計モデルによる媒介分析から導かれた間接効果は、潜在的な生物学的経路を強く示唆する強力なエビデンスではあるものの、厳密な生物学的因果関係を直接的に証明するものではありません。因果の確証には、今後の介入試験や反復測定による縦断的検証が不可欠です。

明日から実践できる臨床・生活への応用

本研究がもたらした最大のメッセージは、心血管病変の予防において「総カロリーや個別栄養素の計算」だけでは不十分であり、「食品の加工度そのもの」に目を向けなければならないという点です。超加工食品は高い嗜好性、低い満腹感、急速な消化吸収性を併せ持つように工業設計されており、無意識の過剰摂取と中心性脂肪の蓄積を招きやすくなっています。

明日から自らの生活や患者指導に活かせる具体的なアクションは以下の通りです。

第一に、体格評価の基準としてBMI以上に「ウエスト・身長比(WHtR)」を重視することです。本研究において、CVDリスクの40%以上を媒介していたのは腹囲を中心とする中心性肥満でした。身長に対する腹囲の比率(腹囲÷身長)を0.5未満に維持することを明確な目標値として設定します。体重計の数値に一喜一憂するのではなく、メジャーを用いて内臓脂肪の増減をモニタリングすることが、UPFによる弊害を評価する上で最も合理的です。

第二に、「加工度の低いホールフードへの置き換え」を段階的に進めることです。日々の食事からUPFを1サービング減らすだけでも、代謝プロファイルや炎症マーカーの改善につながります。例えば、朝食のシリアルをオートミールや全粒粉の食品に変える、加工肉(ソーセージやハム)を未加工の魚や鶏肉、大豆製品に置き換える、清涼飲料水や人工甘味料入り飲料を水やお茶に変えるといった工夫です。パッケージ裏の原材料表示を確認し、家庭の台所にないような保存料、乳化剤、着色料、香料が複数並んでいる食品を避けるというシンプルなルールを持つだけでも、摂取量は劇的に削減されます。

第三に、健診や臨床検査において「高感度CRPや炎症の兆候」を意識することです。LDLコレステロールや血圧が正常範囲に保たれていても、加工度の高い食事習慣と内臓脂肪の蓄積がある場合、血管内皮下ではIL-6を起点とした慢性炎症が進行しているリスクがあります。脂質や血圧といった従来の古典的リスク因子のみにとらわれず、食習慣の背景にある加工度と潜在的炎症に目を向ける総合的なリスク評価が求められます。

参考文献

Haidar A, Flynn S, Rikhi R, Watson KE, Wood AC, Shapiro MD. Central Adiposity and Inflammation Mediate the Association Between Ultraprocessed Food Intake and Cardiovascular Disease Risk. JACC Adv. 2026;5:103247.

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