血管迷走神経失神(めまい、ふらつき、いわゆる脳貧血)に対するヨガのエビデンス

失神、意識消失

前回の復習

女子学生が朝礼で突然倒れたりするエピソード、俗に言う「貧血」とか「脳貧血」(注:医学的な「貧血」とは異なります、医学的には「vasovagal syncope 血管迷走神経失神」と言いますが、ヨガがその予防や症状(QOL)改善に有用であるという話を少し前にしました。

今回は、同じテーマで系統的レビュー、メタ解析論文が出ていましたのでご紹介します。

ちなみに「系統的レビュー」「メタ解析」とは、同様のテーマの論文を複数集めて、それを合わせて解析するというものです。「エビデンス」としてはより高いものと一般的には考えられています。

血管迷走神経失神の治療法としてのヨガ:システマティックレビューとメタ解析

Yoga as a treatment for vasovagal syncope: A systematic review and meta-analysis.
Complement Ther Clin Pract. 2022 Apr 4;48:101579. 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35390588/

【背景】
血管迷走神経失神(VVS)に対して、ヨガ療法が使用されている。しかし、十分なエビデンスはない。

【目的】
標準的な治療法の補助として、再発性VVS患者に対するヨガの効果を評価すること。

【対象者および方法】
電子データベースを系統的に検索し、再発性VVS患者において、ガイドラインに沿った治療とともにヨガの臨床効果を評価した研究を収集した。

アウトカムは、VVS発作の回数と、12ヶ月後のSyncope Functional Status Questionnaire(SFSQ)スコアによるQoL(生活の質)評価とした。

Mantel- Haenszelランダム効果モデルを用いて、平均差(MD)および95%信頼区間(CI)を算出した。

【結果】
2つのRCTと2つの観察研究の合計4つの研究が含まれた。参加者の合計は309名で、平均年齢は36.4±13.5歳であった。うち141名(45.6%)が男性であった。

ベースラインの失神頻度は、15.6±12.8ヶ月間で3.5±2.38エピソードであった。

ヨガ療法は、対照群と比較して失神および前兆症状のエピソードを有意に減少させた(MD -1.86; 95% CI -3.30, -0.43; P = 0.01)。

しかし、ヨガ療法はSFSQスコアで評価したQoLには有意な改善を示さなかった(MD -30.69; 95% CI -62.22,0.83; P = 0.06)。

【結論】
ヨガ療法は、再発性VVS患者の失神および前兆症状の頻度を減少させることができる有用な生活習慣介入である。
より質の高いRCTが必要である。

結論:失神対策にヨガは有用

ということで、以前ご紹介した研究と概ね同じ結論になっており、ヨガは血管迷走神経失神、いわゆる脳貧血のような症状の予防に有用のようです。

基本は、生じやすい環境(高温、多湿、長時間の立位など)を避けたり、飲水を十分とったり、食事(特に朝食)を十分とったりという対策もぜひ実践してください。飲酒も控え目の方が良いです。


ヨガによく似たピラティスでも代用になるように思います。

【参考文献】

Abdelazeem B, Abbas KS, Manasrah N, Amin MA, Mohammed SM, Mostafa MR. Yoga as a treatment for vasovagal syncope: A systematic review and meta-analysis. Complement Ther Clin Pract. 2022 Apr 4;48:101579. doi: 10.1016/j.ctcp.2022.101579. Epub ahead of print. PMID: 35390588.

タイトルとURLをコピーしました