加糖清涼飲料水(SSBs)がもたらす世界規模の健康リスク2024

食事 栄養

加糖飲料の危険性を改めて証明した研究

砂糖入り飲料、いわゆる加糖飲料(SSBs: Sugar-Sweetened Beverages)は、私たちの日常生活に広く浸透している。コーラ、エナジードリンク、フルーツパンチ、スポーツドリンクなど、多くの製品が該当する。これらが、我々の健康に悪影響を与えるとする研究が多く発表されてきた。そして、今回またその悪影響をアップデートする新たなデータが発表された。

最新の『Nature Medicine』に掲載された研究(Laura Lara-Castor et al., 2024)は、184カ国を対象に、SSBs摂取が2型糖尿病(T2D)および心血管疾患(CVD)の発症にどれほど寄与しているかを解析した。その結果はインパクトのあるものである。2020年において、世界で220万件の新規T2D症例(全体の9.8%)、120万件の新規CVD症例(全体の3.1%)がSSBsの摂取に起因していたと推定されたのだ。

主な結果を以下に記す。

研究の主な結果

  1. SSBsは2型糖尿病(T2D)と心血管疾患(CVD)の発症リスクを増加させる
    • 高カロリーの液体糖分は満腹感を得にくく、過剰摂取しやすい。
    • 高GIの糖分はインスリン分泌を促進し、内臓脂肪の増加を引き起こす。
  2. 2020年には全世界で220万件のT2D、120万件のCVDがSSBsに起因
    • 全T2D発症の9.8%、全CVD発症の3.1%を占める。
  3. SSBsによる影響は特にラテンアメリカ・カリブ海地域とサハラ以南のアフリカで深刻
    • ラテンアメリカ(T2Dの24.4%、CVDの11.3%)、サハラ以南のアフリカ(T2Dの21.5%、CVDの10.5%)。
  4. 1990年から2020年の間にサハラ以南のアフリカでSSBsの影響が急増
    • T2D +8.8%、CVD +4.4%と、世界で最も増加率が高い。
  5. SSBsの影響は、男性・若年層・都市部住民・高学歴層で顕著
    • 男性のT2D発症率: 10.1%、女性: 9.5%
    • 若年層(25–29歳)ではT2D発症の15.6%がSSBsに起因。
    • 都市部(11.3%)>農村部(7.0%)
  6. メキシコ、コロンビア、南アフリカではSSBsによるT2Dの影響が最大
    • メキシコ: 30%のT2DがSSBsによるもの
    • コロンビア: 48.1%のT2DがSSBsによるもの
    • 南アフリカ: 27.6%のT2DがSSBsによるもの
  7. SSBsの摂取量が高い国では、対策が進められているものの効果は限定的
    • 例: メキシコや南アフリカではSSB税が導入されているが、摂取量の減少は限定的。
  8. 低所得国では清潔な水の入手困難がSSBs消費を助長する
    • コロンビア、メキシコ、タイなどでは、安全な飲料水へのアクセス不足が問題。
  9. 企業のマーケティング戦略がSSBsの摂取を促進している
    • 南アフリカでは富裕層の若年男性をターゲットに広告展開。
    • イギリスではSSB税導入後も、企業が広告・販売戦略を強化。
  10. 世界的に見ても、SSBsによるT2Dの影響は増加傾向
  • 世界全体では1990年から2020年の間にT2D発症への寄与率が+1.3%。
  • これは健康政策の不十分さを示唆。

世界のSSBs摂取量の概要

  • 2020年の世界平均
    週2.6回(1回8オンス≒248g)
    (95%信頼区間:2.4~2.8回)
  • 地域別のSSBs摂取量(1週間あたりの摂取回数)
    • ラテンアメリカ・カリブ海地域7.3回(6.7~8.1回)
    • 南アジア0.7回(0.5~1.1回)(最も少ない)
    • その他の地域:中程度の消費量
  • 国別(30カ国のうち最も多い国)
    • コロンビア17.4回(13.2~22.7回)
    • 南アフリカ9.6回(7.5~12.5回)
    • メキシコ8.5回(7.8~9.4回)
    • エチオピア6.9回(5.5~8.7回)
  • 最も消費量が少ない国
    • インド、中国、バングラデシュ0.2回(ほぼ飲まれない)

これらのデータを見ると、SSBsの消費量は地域によって大きな差があり、特にラテンアメリカ・カリブ海地域が突出して多いことが分かります。逆に、南アジア(インドやバングラデシュを含む)では非常に低い消費量であることが示されています。

分析手法:どのようにしてこのデータを導き出したのか?

本研究は、比較リスク評価(Comparative Risk Assessment: CRA)という統計手法を用いた。このモデルは、過去の大規模疫学研究やメタ解析から得られた「SSBs摂取がT2DやCVDの発症リスクをどれほど増加させるか」というデータを基に、実際の疾病発生率と関連付けて計算を行う。

研究では、Global Dietary Database(GDD)を活用し、118カ国、290万人以上の食事データを解析した。さらに、性別、年齢、教育水準、都市/農村の居住環境といった因子を考慮し、より詳細なリスク評価を行っている。

その結果、SSBsの摂取が多い国ほどT2DとCVDの発症率が高いという明確な相関が示された。特に影響が大きいのは、ラテンアメリカ・カリブ海地域(T2D: 24.4%、CVD: 11.3%)、サハラ以南のアフリカ(T2D: 21.5%、CVD: 10.5%)だった。

メカニズム:なぜSSBsはT2DとCVDを引き起こすのか?

(1) 急速な血糖上昇とインスリン抵抗性の促進

SSBsは液体であるため、消化・吸収が速く、血糖値が急激に上昇する。これにより、膵臓からのインスリン分泌が急増し、長期的にはインスリン抵抗性が形成される。特にフルクトースを多く含む飲料は、膵β細胞の過剰刺激を引き起こし、最終的に糖尿病発症へとつながる

(2) 内臓脂肪蓄積と慢性炎症の誘導

高濃度のフルクトースは、肝臓での脂肪合成を促進し、異所性脂肪(ectopic fat)として内臓に蓄積される。これは脂肪肝(NAFLD)の発症を加速させ、インスリン抵抗性をさらに悪化させる。加えて、脂肪組織からは炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)が分泌され、慢性炎症状態を誘発し、糖尿病や動脈硬化のリスクを高める。

(3) 血管内皮障害と動脈硬化の進行

SSBsの長期摂取により、酸化ストレスとAGEs(終末糖化産物)の生成が増加し、血管内皮細胞の機能が低下する。これが、動脈硬化や血栓形成を促進し、心血管疾患リスクを高める

今日からできる対策

本研究から得られる知見を、具体的な行動に落とし込もう。

1.「ゼロカロリー」飲料も慎重に 人工甘味料(アスパルテーム、スクラロースなど)は腸内細菌叢に影響を与え、インスリン感受性を低下させる可能性が示唆されている。可能であれば、水やお茶を選択するのが望ましい。

2. 週2回以上のSSBs摂取を控える 研究によると、週1回未満のSSBs摂取ではT2D発症リスクはほとんど上昇しない。一方で、1日1杯(250ml)以上の摂取でT2Dリスクが1.2~1.5倍に上昇することが報告されている。

3. 栄養表示を確認する習慣をつける 「100%ジュース」でも高糖質であり、1本で40g以上の糖分を含むものもある。本来果物に含まれる食物繊維などの有益な物質も削がれてしまっている。成分表を確認し、糖分の過剰摂取を避ける意識を持つことが重要

4. 国レベルの政策介入を支持する 南アフリカやメキシコではSSBs税が導入されているが、業界の抵抗もあり、政策の効果は限定的である。個人レベルだけでなく、社会全体での対策が必要

まとめ

本研究は、SSBsの健康リスクを明確に示し、その影響が特に発展途上国で深刻化していることを浮き彫りにした。SSBsは単なる「甘い飲み物」ではなく、慢性疾患のリスクを増大させる強力な因子である。個人の選択と社会的対策の両面から、SSBsの消費削減を進めることが求められる。

参考文献

Lara-Castor, L., O’Hearn, M., Cudhea, F., Miller, V., Shi, P., Zhang, J., Sharib, J. R., Cash, S. B., Barquera, S., Micha, R., & Mozaffarian, D. (2024). Burdens of type 2 diabetes and cardiovascular disease attributable to sugar-sweetened beverages in 184 countries. Nature Medicine. https://doi.org/10.1038/s41591-024-03345-4

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