ラーメン摂取と死亡リスク:山形コホート研究からの新たな示唆

食事 栄養

はじめに

日本人にとってラーメンは国民的食文化の象徴であり、他の麺類(そば・うどん)よりも購入頻度が高い食品です。しかし、その一杯には多量の塩分が含まれており、過剰摂取は高血圧や脳卒中、さらには胃がんリスクを高める可能性が懸念されてきました。これまで地域レベルでラーメン店の多さと脳卒中死亡率との関連が指摘されていましたが、個人単位での摂取頻度と死亡リスクの関連を明確にした研究はありませんでした。本研究は、山形コホート研究のデータを用いて、ラーメン摂取頻度と全死亡リスクとの関連を解析した初めての大規模疫学研究です。

方法

研究対象は40歳以上の6,746人の住民で、初年度死亡者21人を除外し、最終的に6,725人(男性2,349人、女性4,376人)が解析に含まれました。平均年齢は59.7歳でした。ラーメン摂取頻度は「<1回/月」「1–3回/月」「1–2回/週」「≥3回/週」の4群に分類し、さらにスープ摂取量は「50%以上」または「50%未満」に二分しました。追跡期間は中央値4.5年で、死亡情報は死亡診断書から取得されました。統計解析にはCox比例ハザードモデルを用い、年齢・性別・喫煙・飲酒・スープ摂取量・糖尿病・高血圧・脂質異常症を調整因子としました。参照群(reference)は「1–2回/週」と設定されました。

結果

追跡期間中に145例の死亡(がん100例、心血管疾患29例)が確認されました。全体解析では「≥3回/週」の群で死亡リスクが上昇傾向(HR 1.52, 95%CI 0.84–2.75)を示しましたが、有意差はありませんでした。一方、サブグループ解析により重要な知見が得られました。

  • 男性では「<1回/月」の群で死亡リスクが有意に上昇(HR 2.07, 95%CI 1.09–3.97)。
  • 70歳未満では「<1回/月」(HR 2.17, 95%CI 1.08–4.34)および「≥3回/週」(HR 2.20, 95%CI 1.03–4.73)で死亡リスクが有意に上昇。70歳以上ではラーメン摂取頻度と死亡リスクの関連は認められませんでした
  • スープ摂取50%以上では「<1回/月」でリスクが上昇(HR 2.43, 95%CI 1.20–4.92)。
  • 飲酒者では「≥3回/週」でリスクが顕著に上昇(HR 2.71, 95%CI 1.33–5.56)。

これらの結果から、全体解析では統計的有意差が出なかったものの、特定の集団においてラーメン摂取頻度と死亡リスクの間に強い関連が存在することが示唆されました。

考察

塩分と疾患の関連

ラーメンのリスク因子の中心は塩分です。日本の国民健康・栄養調査(2023年)によれば、男性で10.7g、女性で9.1gの平均塩分摂取が報告されており、推奨値(男性7.5g未満、女性6.5g未満)を大きく上回っています。本研究で高頻度摂取者がスープの過半を飲み干す傾向にあったことは、ナトリウム負荷をさらに高め、血圧上昇や胃粘膜損傷を介して脳卒中や胃がんリスクを増加させる経路を支持します。

男性と若年層における影響

男性や70歳未満で有意なリスク上昇が確認された背景には、ラーメンの摂取量そのものが多いこと、さらに喫煙や飲酒といったリスク行動が併存していることが考えられます。特に若年男性ではナトリウム摂取源の多くを麺類が占めるとされ、死亡リスクとの関連が強く現れた可能性があります。

「少なすぎる摂取」でのリスク上昇

興味深いのは、「<1回/月」という低摂取群で死亡リスクが高かった点です。これは単純に「食べないことが危険」という解釈ではなく、基礎疾患を抱えた人が医師から摂取制限を受けていた可能性や、すでにフレイル状態にあるため食事パターンが偏っていた可能性が指摘されます。すなわち、低摂取群のリスク上昇は「逆因果」の影響を受けていると解釈されます

同様に、「スープを多く飲む人」の中で「ラーメンをほとんど食べない人」がむしろ死亡リスクが高かった というのは、塩分負荷そのものよりも、背景にある疾患や健康状態の影響を強く反映していると解釈されます。

つまり、この結果は「ラーメンを全く食べないと危険」という意味ではなく、健康状態の悪い人がラーメンを控えていることが統計に現れた可能性が高いということです。

なぜ70歳以上ではリスクが上がらなかったのか?

70歳以上ではラーメンの摂取頻度が多くても死亡リスクが有意に上昇しなかった ことが示されています。


結果の確認
  • 70歳以上(n=2,636)では:
    • <1回/月:HR 0.95(95%CI 0.47–1.94)
    • 1–3回/月:HR 1.11(95%CI 0.62–1.99)
    • 1–2回/週:参照群
    • ≥3回/週:HR 0.91(95%CI 0.33–2.48)

→ 有意差はなく、摂取頻度と死亡リスクに明確な関連は認められませんでした。


考えられる要因 
① サバイバー効果(Survivor bias)
  • 70歳以上で調査に参加できている人は、それまでに高塩分摂取による影響(脳卒中や心疾患)を乗り越えてきた「比較的健康なサバイバー集団」です。
  • つまり、既に脆弱な人は若いうちにリスクを発症しており、研究開始時に残っている70歳以上は「耐性を持つ人」が多い可能性があります。
② 食習慣の均質化
  • 高齢になると食欲や咀嚼力の低下、医師からの食事指導などにより、ラーメン摂取量やスープ摂取量が若年層より減少する傾向があります。
  • その結果、ラーメンの摂取頻度による健康差が小さくなったと考えられます。
③ 他の死因の影響
  • 70歳以上では、がんや感染症、加齢関連疾患(認知症、呼吸器疾患など)による死亡リスクが支配的になります。
  • そのため、ラーメンの塩分摂取という一要因の影響が統計的に埋もれてしまった可能性があります。
④ 統計的検出力の不足
  • 70歳以上の「≥3回/週」群は181人と少なく、死亡例も限られていました。
  • そのため、有意差が出るほどの統計的パワーが不足していた可能性があります。

男女差

・男性では、特に「<1回/月」で死亡リスクが有意に上昇。また「≥3回/週」でもリスク上昇傾向がありました。

・ 女性では、いずれの頻度でも有意な死亡リスク上昇は認められませんでした。

考えられる要因 
  • 男性は女性に比べて一回あたりの摂取量が多く、ラーメンを「大盛り」で食べる習慣やスープを飲み干す傾向が強いとされています。
  • ナトリウム負荷による血圧上昇や胃がんリスクの影響は、男性でより強く現れる可能性があります。
  • 男性は喫煙・飲酒の併存率が高く、ラーメン摂取と組み合わさることでリスクが増幅していると考えられます。
  • 女性では、食事全体におけるラーメンの寄与度が相対的に小さい可能性があります。

実践的意義

読者が明日から取り組める実践的な行動として、以下が挙げられます。

  1. ラーメンの摂取頻度を週1~2回に抑える。
  2. スープは半分以上残す習慣を持つ。
  3. 飲酒時にラーメンを組み合わせない。
  4. 高血圧や糖尿病を有する人は特に摂取頻度を制限する。

これらはシンプルながら、ナトリウム負荷を軽減し、長期的な健康リスク低減につながります。

Limitation

本研究にはいくつかの制約があります。

  • 観察研究であるため因果関係は証明できないこと。
  • 食事調査は自己申告に基づいており、ラーメンの種類や一杯あたりの量を正確に把握できていないこと。
  • 死因別の症例数が少なく、疾患ごとの詳細解析が不十分であること。
  • 他の食習慣や運動習慣、社会経済的要因を十分に調整できていない可能性があること。
  • サブグループ解析は多重比較補正を行っていないため、探索的な位置づけにとどまること。

これらの制約を踏まえ、今後はより詳細な食事データや生活習慣情報を組み込んだ研究が求められます。

結論

山形コホート研究の解析から、ラーメン摂取は全体として死亡リスクと明確に結びつかないものの、男性、70歳未満、スープを多く飲む群、飲酒者では死亡リスクを有意に増加させることが示されました。日本における食文化の代表ともいえるラーメンを対象としたこの研究は、食品単位での具体的リスク評価の新しい一歩です。適切な摂取頻度と摂取方法を意識することが、個々人の健康維持につながると結論づけられます。


参考文献

Suzuki M, Suzuki N, Sho R, Souri M, Konta T. Frequent Ramen consumption and increased mortality risk in specific subgroups: A Yamagata cohort study. J Nutr Health Aging. 2025;29:100643. doi:10.1016/j.jnha.2025.100643

おまけのつぶやき:この研究からは、ラーメン食べ過ぎは良くない、とは言えない。

この研究のデータだけをもって「ラーメンを食べ過ぎると死亡リスクが上がる」と断定的に言うことはできません。


全体解析では有意差なし

  • 6,725人を対象とした全体解析では、「≥3回/週」群のHR 1.52(95%CI 0.84–2.75) はリスク上昇傾向はあるものの統計的に有意ではありませんでした。
  • つまり「ラーメンをよく食べる人=死亡リスクが必ず高い」とは示されませんでした。

有意差が出たのは特定のサブグループのみ

  • 70歳未満の集団で「<1回/月」と「≥3回/週」の両方が有意にリスク上昇。
  • 飲酒者+≥3回/週では有意にリスク上昇。
  • ただし、女性や70歳以上では有意差なし。

このことは「背景因子(年齢・性別・飲酒習慣など)」によってリスクの出方が変わることを意味し、単純に「ラーメン=悪」とは言えません。

ちなみに、対象者の背景

論文では、ラーメン摂取頻度ごとに参加者の特徴を整理した表が示されています。
そこからわかることは、

  • 「≥3回/週」の高頻度摂取群では、
    • 男性の割合が高い
    • 平均年齢が若い
    • BMIが高い(肥満傾向)
    • 喫煙率・飲酒率が高い
    • スープを50%以上飲む割合が高い
    • 糖尿病・高血圧の有病率が高い

一方で、<1回/月の低摂取群は比較的女性が多く、年齢も高めで、基礎疾患(特に高血圧や糖尿病)を抱えてラーメンを控えている可能性があると解釈されています。


この研究から言えること

  • 「ラーメンを日常的に多く食べる人は、喫煙・飲酒・高BMI・高血圧・糖尿病など不健康な生活習慣と結びついている傾向がある」。
  • 「特に70歳未満や飲酒者では、ラーメン多食と死亡リスクの関連が強く出る可能性がある」。
  • 「しかし、全体としては有意なリスク上昇は示されていないため、ラーメンを食べること自体を禁止する根拠にはならない」。

まとめ

この研究からは「ラーメンを食べ過ぎると必ず死亡リスクが上がる」とは言えません。
ただし、高頻度摂取は生活習慣病や高塩分摂取と強く結びついており、特定の人(男性・70歳未満・飲酒者)ではリスク増加が有意に見られたため、注意すべき行動習慣の一つと考えるのが妥当です。

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