各国の推奨
野菜、果物をよく食べなさい、と言われますがどのくらい食べれば良いのでしょうか。
これまでも様々な研究が発表されており、それらに基づいて例えば米国では、野菜2.5サービング/日と2サービング/日の果物が推奨されています。
「サービング serving」とは、ざっくり1食分、一皿分のことで、目安としては80-100gくらいです。
世界保健機関(WHO)、世界がん研究基金(WCCF)、イギリス国民保健局(National Health Service of England)では、5サービング/日の果物と野菜の摂取を推奨し、デンマークでは6サービング/日、オーストラリアでは8.5サービング/日が推奨されているそうです。
日本では厚生労働省や農林水産省が野菜350g/日、果物200g/日食べるよう推奨しています。概ね野菜4サービング/日、果物2サービング/日といったところです。
参考:
e-ヘルスネット 野菜食べていますか?
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-015.html
健康長寿ネット 果物摂取量の目安
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/fruit.html
様々な国や組織から、様々な量が推奨されていますが、微妙に異なります。どのくらいが最善なのか、、より明確な摂取指標があると良いと感じる方も多いでしょう。
それに応えるような大きなコホート研究と、それを含めた最新のメタ解析論文がこちらです。
果物と野菜の摂取量と死亡率 米国の男女を対象とした2つの前向きコホート研究と26のコホート研究のメタ解析
Fruit and Vegetable Intake and Mortality Results From 2 Prospective Cohort Studies of US Men and Women and a Meta-Analysis of 26 Cohort Studies
Circulation. 2021;143:00–00.
【背景】
長期的な健康維持のための果物や野菜の最適な摂取量は不明である。
【方法】
心血管疾患(CVD)、がん、糖尿病に罹患していない看護師健康調査(NHS)(1984~2014年)の女性66,719人と、医療従事者フォローアップ調査(HPFS)(1986~2014年)の男性42,016人を対象とした。
食事内容は、研究開始時に食事頻度質問票を用いて評価し、2~4年ごとに更新した。
また、この2つのコホート研究と他の24の前向きコホート研究により、用量反応メタアナリシスを行った。
【結果】
追跡期間中に33,898人が死亡した。交絡因子および危険因子を調整した後、果物と野菜の摂取量と総死亡率およびがん、心血管疾患、呼吸器疾患に起因する原因特異的死亡率との(非線形)逆相関が観察された(すべてP nonlinear<0.001)。
(つまり、果物と野菜を食べるとそれらのリスクが低下する)
死亡率が最も低いのは、1日あたり果物と野菜5サービング、または果物2サービングと野菜3サービングの摂取だった。それ以上の摂取しても追加のリスク低減は認めなかった。
基準値(2サービング/日)と比較して、5サービング/日の果物と野菜の摂取は、総死亡率でハザード比(95%CI)0.87(0.85-0.90)、CVD死亡率で0.88(0.83-0.94)、がん死亡率で0.90(0.95)、呼吸器疾患死亡率で0.65(0.59-0.72)だった。
1,892,885人(経過中、145,015人が死亡)を対象とした用量反応メタアナリシスでも、同様の結果が得られた(サービング/日=0.87 [95%CI、0.85-0.88]; P nonlinear<0.001)。ほとんどのサブグループの果物と野菜の高摂取量は、死亡率の低下と関連していた。ただし、エンドウ豆やトウモロコシなどのでんぷん質の野菜は低下しなかった。また、フルーツジュースとジャガイモの摂取量は、総死亡率および原因別死亡率とは関連していなかった。
(このメタ解析では1サービング=80gとしています)
【結論】
果物と野菜の摂取量の増加は死亡率の低下と関連していた。
果物と野菜を5サービング/日摂取することでリスクの減少が最大化する。
とにかく、1日果物200gと野菜300gくらい食べましょう
要するに、
・果物2サービング/日と野菜3サービング/日
サービングってよくわからん、、と言う方には、重さで表現すると、ざっくり
・果物160-200gほど、野菜240-300gほど
このくらい食べると、健康、病気の予防としては最も効果的と言うことになります。
これ以上食べても悪くはないですが、病気の予防においてメリットが増えるわけではありません。糖尿病の人は、果物は食べすぎない方が良いかもしれません。
日本(厚生労働省や農林水産省)の推奨は果物200g/日、野菜350g/日でしたので今回の研究結果と概ね合致します。よかったです。
ただし、ジャガイモやとうもろこしなどデンプン質が多いものはリスク軽減効果がありませんので野菜の量に含めない方が良いようです。
フルーツジュースもお勧めできません。
【参考文献】
Wang DD, Li Y, Bhupathiraju SN, Rosner BA, Sun Q, Giovannucci EL, Rimm EB, Manson JE, Willett WC, Stampfer MJ, Hu FB. Fruit and Vegetable Intake and Mortality: Results From 2 Prospective Cohort Studies of US Men and Women and a Meta-Analysis of 26 Cohort Studies. Circulation. 2021 Mar 1. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048996. Epub ahead of print. PMID: 33641343.