温暖化が進み、5-6月でも暑い日が増えています。熱中症も発症しています。
熱中症の主な病態の1つは「脱水」です。
暑い日に、どのくらい水を飲めば良いのか?という質問をよく受けます。
大変難しい質問です。
喪失水分量
人間の身体は約60%が水です(1) 。
体重が70kgの人ですと、42リットルの水を含んでいることになります。
その体内の水分は、様々な経路で体外に出て、喪失されます。
各経路の1日あたりのおおよその喪失水分量です(安静時)(1) 。
・呼吸 250-350ml/日
・尿 500-1000ml/日
・便 100-200ml/日
・皮膚からの不感蒸泄 450-1900ml/日
つまり、安静時には合計約1300-3450ml/日の水分が失われるわけです。
身体活動時には、
・汗 1550-6730ml/日
つまり、身体活動が加わると合計約1850-8630ml/日の水分が失われるのです(1)。
暑さや湿度など様々な環境、活動度、服装、、水分喪失を左右する因子は極めて多種に及びます。
予測は難しい
体重の60%もの多量の水分を有し、かつ、その水分の喪失も約1.3-8.6リットル/日と大変広い幅があり、予測は難しいわけです。
つまり、「暑い日は○○mlの水分を飲みましょう!」といったような一律に至適飲水量を定めることは困難と思います。
各々が、自分の喪失水分に見合った量を飲水で補うということになります。
(もしくは喪失水分を見込んで、予防的に摂取する。)
基本的には、口渇を感じた際にそれを潤すように水分を補うことでほぼ問題ない(心不全患者さんなど心機能に問題のある方はその限りではありません。主治医の指示に従いましょう。)のですが、発汗量がとても多い時など飲水量に迷う場合に参考になるのは「体重」です。
日々体重測定をしておき、自分の標準的な体重を把握した上で、汗をかいた際に体重測定をすることでいつもの自分の体重との差を水分で補えば良いということになります。もっとざっくりえいえば、いつもより体重が少なければ多めに水分を摂って、いつもより体重が多ければ水分は無理に摂らなくても良い、ということです。
(なお、発汗多量の際は、水のみならず塩分も補った方が良いです。水1000mlに1-2gほどの塩分量が目安です)
まとめ
・基本的には、口渇を感じた際にそれを潤すように水分を補う。
・人間の1日あたりの水分喪失量は1300-8630mlと幅広く予測困難。
・従って、一律に至適飲水量を定めることは困難。
・体重測定を習慣化しましょう。
・飲水量を迷ったら、いつもの体重との差を参考にしましょう。
【参考文献】
(1) Popkin BM, D’anci KE, Rosenberg IH. Water, hydration, and health. Nutr Rev. 2010;68(8):439-58.