【高血圧と睡眠時無呼吸】高血圧と睡眠時無呼吸症候群の深い関係。その特徴、病態、対処法

心臓血管

高血圧と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係は非常に深く、見逃してはならない重要なポイントです。この記事では、高血圧とSASの関係、その特徴、病態、そして対処法について、循環器専門医の視点から解説します。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まってしまう病気です。SASの患者は、いびきがひどい、朝の目覚めが悪い、日中に強い眠気を感じるなどの症状を呈することが典型的ですが、自覚症状が全くない人もいます。

日本では、軽症を含めて約2000万人がSASを患っているとされ、中等度以上の患者は約900万人と推定されています。特に肥満の人に多いですが、痩せている人でも発症することは珍しくなく、特にアジア人は顎の骨格が小さいため、気道が閉塞しやすいとされています。

高血圧と睡眠時無呼吸症候群の密接な関係

SASと高血圧には強い関連性があります。
高血圧患者の約60%がSASを合併しており、特に治療抵抗性高血圧(複数の薬を使用しても血圧が下がりにくいタイプ)の患者の約80%がSASを持っているというデータがあります。
また、逆にSAS患者の約50%が高血圧を合併しているという報告もあります。

睡眠時無呼吸症候群を伴う高血圧の特徴

治療抵抗性高血圧

SASを伴う高血圧は、治療が難しく、複数の降圧剤を使用しても目標血圧まで下がらないことが比較的多いです。

夜間高血圧

一般的に血圧は日内変動として夜間に相対的に低めになることが多いです。ところが、SAS患者は、夜間に呼吸が止まることで血圧が上昇しやすく、夜間の血圧が高くなる場合が多いです。日中も夜間も高い場合「non-dipper型」と言い、また日中より夜間が高くなるタイプを「riser型」と言い、これらは心臓血管系の合併症を生じやすいと考えられています。

仮面高血圧

夜間高血圧と関連しますが、医療機関では血圧が高くなく、医療者が気づかない「仮面高血圧」となることがしばしばあります(患者本人も気づかないかもしれない)。
日中の血圧や診察室血圧が高くない割に、左室肥大など心臓血管系への悪影響が大きいため、仮面高血圧の病態に気づくことがあります。

血圧変動性増大

測定のたびに血圧が上がったり、下がったりとばらつきが大きくなる傾向があります。

上腕血圧左右差の増大


SASの重症度が上がるにつれて血圧の左右差が10mmHgを超える頻度が増えるという報告があります。理由はよく分かりません。

なぜ睡眠時無呼吸症候群は高血圧を引き起こすのか?

SASが高血圧を引き起こすメカニズムは主に以下の3つです。(SASと心房細動の関係でも触れました)

胸腔内陰圧化

気道が閉塞したまま呼吸努力をすることで胸腔内が陰圧となり、心筋に圧負荷が生じたり、静脈還流が増加し心臓に負担を生じます。交感神経系が亢進します。

低酸素、高炭酸ガス

間欠的に低酸素を生じ、交感神経系が亢進し血圧が上がります。
慢性的な間欠的低酸素により、血管の化学反射の亢進、圧反射の減弱が生じ、血圧上昇の抑制系の減弱  が助長され、さらなる血圧上昇をきたすことになります。

覚醒、睡眠の分断

呼吸が止まるたびに睡眠が中断され(覚醒)、交感神経が活性化されます。
通常、深い睡眠は、呼吸心拍は安定、成長修復に関連するホルモン分泌を促したりしますが、その
深睡眠の時間が短くなり高血圧を助長します。

その他の要素と続発症

交感神経系の亢進と合わせて、視床下部(Hypothalamic)-下垂体(Pituitary)-副腎(Adrenal )軸や、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系というホルモン分泌システムが亢進し高血圧を助長します。
血管に酸化ストレスが生じたり、一酸化窒素(NO)濃度低下やエンドセリン上昇、炎症反応亢進するなどし、血管内皮障害や動脈の中膜が硬くなるなど血管リモデリングが生じ、大動脈拡張、大動脈瘤形成、大動脈解離などが続発することもあります。

睡眠時無呼吸症候群を伴う高血圧の対処法

SASの重症度にもよりますが、中等度以上のSASを伴う高血圧の治療には、通常の降圧剤に加えて、SASに対する治療が必要です。
SASの治療として一般的なCPAP(持続的陽圧呼吸療法)は、血圧を下げる効果があるものの、完全なコントロールを目指すためには降圧剤との併用が必要となることが一般的です。

結論

高血圧を指摘されている人、治療中の方で、以下のような特徴がある場合は、SASの簡易検査を検討することをお勧めします。

・複数の薬を使っても血圧が下がりにくい
・血圧が測るたびに大きく変動する
・左右の腕で血圧差が10以上ある
・いびきがひどい、日中に眠気が強い、夜中に目が覚める、夜間頻尿がある などSASの典型的症状がある

これらの症状が見られる場合、ご相談ください。
SASの診断と治療により、高血圧の管理がより効果的になる可能性があります。

タイトルとURLをコピーしました