脂質代謝

飽和脂肪酸と健康:栄養素から食品ベースの視点へ

はじめに 飽和脂肪酸(saturated fatty acids, SFA)は長らく「心血管疾患の主要な危険因子」とみなされ、米国をはじめとする多くの食事ガイドラインで総摂取エネルギーの10%未満に制限するよう推奨されてきました。しかし、本...
脂質代謝

日本人におけるリポ蛋白(a)と心血管疾患リスク

はじめに 近年、リポ蛋白(a) は従来の脂質指標では説明できない心血管リスクを担う独立した因子として注目されています。欧米ではすでに30 mg/dLや50 mg/dLといったカットオフ値が臨床指針に組み込まれつつありますが、日本ではその基準...
糖尿病関連

神経回路から見た糖代謝制御、糖尿病の新たな治療戦略の可能性

はじめに 糖代謝は、単に膵臓のインスリン分泌や肝臓の糖産生といった臓器レベルの調節にとどまらず、中枢神経系と末梢神経系が緻密に関わるシステム全体の制御機構として理解されつつあります。本論文は、近年の光遺伝学や化学遺伝学などの技術を駆使した研...
中枢神経・脳

受容体は「単なる入り口」ではなく「認知の主体」?:「We Are Our Receptors」

序論 私たちが普段「認知」と呼んでいるものは、脳の皮質が情報を処理する結果として理解されてきました。しかし、2025年にArturo Tozzi氏が発表した論文「We Are Our Receptors: Rethinking Cortex...
心臓血管

恐怖は本当に「血を凍らせる」のか:ホラー映画と凝固因子VIII上昇の科学

序論:言葉と科学の接点 「血が凍るような恐怖」という表現は、英語の bloodcurdling をはじめ、フランス語の à vous glacer le sang、ドイツ語の das blut in den Adern erstarrt な...
中枢神経・脳

気象と片頭痛――「単独原因」ではなく「閾値を超える複合要因」としての理解

背景と目的 片頭痛は若年女性で最大の障害要因の一つであり、患者はしばしば「天気が悪いと頭が痛む」と訴えます。本レビューは、気圧・湿度・風・雷などの気象要素が頭痛、とりわけ片頭痛にどう関わるのかを、近年の研究知見と神経生物学的メカニズムの視点...
睡眠

なぜ私たちは眠くなるのか? ― ミトコンドリアが握る「睡眠のスイッチ」

はじめに 「なぜ眠らなければならないのか?」という問いは、古代から哲学者や科学者が繰り返し考えてきたテーマです。体を休めるため、記憶を整理するため、脳をクリーンアップするため――さまざまな説がありますが、いまだに「眠気が生じる根本的な理由」...
呼吸

吸入薬と温室効果ガス排出:臨床と環境の交差点

序論 喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入薬は欠かすことのできない存在です。とりわけメータードーズ吸入器(MDI)は、その使いやすさと即効性から広く処方されています。しかし、このMDIには強力な温室効果ガスであるヒドロフル...
食事 栄養

動物性・植物性たんぱく質摂取と死亡リスクに関する再検証 ― NHANES III解析からの新知見

はじめに 近年、たんぱく質摂取の健康影響について議論が続いています。特に動物性たんぱく質は、がんや心血管疾患(CVD)のリスクを高めるのではないかという懸念が繰り返し提示されてきました。一方で、植物性たんぱく質の摂取は健康長寿に資するとの報...
血圧

オンラインの血圧測定画像は嘘だらけ? オンラインで流通する血圧測定写真の6枚に1枚しか正確でない

序論 血圧測定は臨床現場で最も頻繁に行われる検査の一つであり、高血圧診療の根幹をなしています。ところが、国際ガイドラインに従わない測定法は、実際の血圧値を±30 mmHg近くも歪める可能性があると報告されています。本研究は、主要ストックフォ...