(この記事は、2019年の旧ブログからの転載です)
禁酒の潮流
近年は、飲酒を控えるような動きが大きくなってきています。
例えば、ネットの記事で、
飲酒はもうクールじゃない? 「飲まない」生き方を選んだ人たちの禁酒白書(2019.4.25 Vogue)
https://www.vogue.co.jp/lifestyle/culture/2019-04-25/teetotalism/cnihub
フランス政府が減酒推奨 欧米で高まるノンアル人気(2019.5.13Forbes JAPAN)
時間の価値、飲酒による悪影響
情報爆発の今の時代、やること、やりたいことが著しく増えています。仕事にせよ、勉強にせよ、趣味にせよ、遊びにせよ。とにかく時間がない。
以前に比し「時間」の価値が上がり、限られた時間をどのように配分するかが一人ひとりにとって大変重要になっています。
飲酒するととても楽しいですし、コミュニケーションツールとして良き役割を果たすことは少なくありません。
一方で、飲酒することで貴重な「時間」を浪費することにつながります。
まず、飲み会それ自体の時間。冗長なことも多いです。意義深いミーティングならまだ良いですが、形式だけの飲み会とか、なんとなく飲み会とか(そうであっても有意義な場合があることは否定しませんが)。二次会などに行けばなおさらです。飲み会で良い議論が交わされる場面もあるのですが、自分の場合はその内容を翌日になるとよく覚えていなかったりします。
飲酒すると、その日はそのあとの時間はたいてい使い物になりません。そうでなくとも、何かしようとも効率低下は避けられません。
飲みすぎた場合には、翌日二日酔いでパフォーマンスが顕著に低下します。
自分が、飲酒の問題点として最も大きいと思っていることが、睡眠の質の低下です。やや飲みすぎた日は睡眠の質が顕著に低下し、翌日の目覚めが悪いです。一般的に、飲酒により入眠は良くなりますが、全体に睡眠が浅くなることがわかっています。中途覚醒も増えます。仮に睡眠時間が十分取れていても、あまり熟睡感がなく、眠気が残ってしまいます。寝た気がしない。。。
脱水症状や、胃腸症状、頭痛などの症状に加えて、睡眠の質低下によるパフォーマンス低下も生じ得るのです。
まとめると、
飲酒のメリット
・楽しい時間
・コミュニケーションツール
・美味しい
飲酒のデメリット
・飲み会自体の時間の浪費
・飲酒後のパフォーマンス低下
・二日酔いによる翌日のパフォーマンス低下
・睡眠の質低下による翌日のパフォーマンス低下
→これらパフォーマンス低下による時間効率低下
要するに、自分で意図した時間の使い方ができなくなるわけです。これは辛い。
最近の若者たちはあまり飲酒しないと聞きますが、生まれた時から情報社会に揉まれて、効率的時間配分を意識せざるを得ない彼らですから、飲酒への抵抗感がすでに育まれているのかもしれません。
健康への悪影響
もちろん、飲酒による健康への悪影響も問題です。
かつては少量の飲酒は身体に良いとされてきましたが、最近はそれを否定する論文も出ています(1)。
少量の飲酒で心臓血管疾患リスクが下がる可能性はある(2)と思いますが、癌のリスクは少量でも上がることは間違いなさそうです。トータルでは、飲酒の健康上のメリットはないと思います。
社会への悪影響
健康への害に加え、飲酒が関与する交通事故や暴力、依存症などによる社会への影響も大きく、社会問題となっています。
WHOによると、アルコールが原因で毎年300万人が死亡、10秒に1人が死亡していることになります。
生活環境病
普通に考えれば、総合的には飲酒のデメリットは、メリットよりもはるかに大きく、選択肢は「禁酒一択」です。
例えば、赤ワイングラス1杯で止めることができる人なら、悪影響は無視できるくらいでしょうし、「節酒」で良いでしょう。しかし、少し飲んだら、もっと飲みたくなる、結局酒量が増えてしまう、、というパターンを辿る人は少なくないと思います(←自分はこのタイプです)。
したがって、やっぱり「節酒」より「禁酒」がベターと思っています。
しかし簡単には行きません。禁酒すれば良いのですが、「環境」という大敵がいます。飲酒による健康被害は、「生活環境病」です。まあ、自分も結構飲むので、すっかり生活環境病です。
日本は、街にはアルコールの華やかな広告が溢れており、気軽に飲酒できる店も乱立、夜遅くまで営業しています。
コンビニでも容易にアルコールを購入できます。ウイスキーや焼酎など高アルコール濃度の製品まで簡単に買えてしまいます。そして、そんな文化に洗脳されている我々がいます。気軽に飲みに誘います、誘われます。
一人が禁酒を決心しても、継続しづらい文化が根付いています。
ストレスフルな社会も後押しします。
このような文化を少しづつ変えていくことが必要です。喫煙文化が衰退傾向なのと同様に、10年後にはかなり飲酒文化は衰退していると思います。そんな文化の変化の兆しが少しづつ見えてきているのが、近年の動きなのだと思います。
【参考文献】
(1) Millwood IY, Walters RG, Mei XW, et al. Conventional and genetic evidence on alcohol and vascular disease aetiology: a prospective study of 500 000 men and women in China. Lancet. 2019;393(10183):1831-1842.
(2) Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016. Lancet. 2018;392(10152):1015-1035.