スマートウォッチ血圧計HUAWEI WATCH Dの精度検証 2

Digital Health

高血圧は世界的な健康課題であり、心血管疾患や関連する合併症の最も修正可能なリスク要因として認識されています。国際的な研究によれば、20歳以上の人口の約25%が高血圧を有していると推定され、特に管理や治療が不十分なケースが多い現状が課題となっています。本解説では、中国のPLA総合病院において行われた研究に基づき、HUAWEI WATCH Dという多機能スマートウォッチ血圧計の精度と臨床的有用性を検証した内容を紹介します。


背景

従来の血圧測定方法はそのシンプルさから広く使用されていますが、長期的かつリアルタイムなモニタリングには限界があります。特に、仮面高血圧や夜間血圧変動の監視は従来の機器では困難です。一方で、HUAWEI WATCH Dは、圧脈波法(oscillometry)と光電容積脈波法(PPG)を組み合わせた非侵襲的な技術を使用し、日常生活の中での血圧変動や異常をリアルタイムにモニタリングすることを目的としています。

このデバイスは、“ISO 81060-2:2018”規格に準拠した試験を経て、臨床的な血圧計との比較でその精度を評価されています。また、ユーザーの年齢層ごとの使用状況やコンプライアンスに関する分析も実施されました。


研究方法

対象者選定

この研究では、中国PLA総合病院の361名を対象に、以下の基準で選定されました:

  • 年齢:18–80歳
  • 性別比:男性と女性それぞれ30%以上
  • 除外基準:不整脈、ショック状態、上肢の感染症や出血傾向、精神疾患など

測定手法

以下の4つのアプリケーションに基づいて精度が評価されました:

  1. 安静時血圧測定
  2. 運動時血圧測定(バイク)
  3. 24時間収縮期血圧(SBP)サーカディアンリズムモニタリング
  4. 日中の高SBPアラート

これらの測定は、基準機器(臨床用水銀血圧計)とスマートウォッチを用いて同時に実施され、測定値の平均値や相違がISO規格に適合するかを検証しました。また、ブラン・アルトマンプロットを使用してデータの一貫性を評価しました。


結果

安静時血圧測定の精度

  • 対象者:85名
  • 平均年齢:37±14歳
  • 測定値の平均差:
    • SBP: -0.683±6.203 mmHg(p=0.723)
    • DBP: 1.628±5.028 mmHg(p=0.183)
  • ISO 81060-2:2018基準を満たす結果であり、スマートウォッチは高い一致性を示しました。

運動時血圧測定の精度

  • 対象者:35名
  • 測定値の平均差:
    • SBP: -1.943±5.475 mmHg(p=0.923)
    • DBP: 3.195±5.862 mmHg(p=0.065)
  • SBPとDBPともにISO基準内であり、運動後の動的変化を適切に反映しました。

24時間SBPサーカディアンリズムモニタリング

  • 対象者:107名
  • 精度評価:
    • 正確度:85.0%
    • 特異度:86.4%
    • 感度:83.3%
    • F1スコア※:83.3%

日中の高SBPアラート

  • 対象者:85名
  • 精度評価:
    • 正確度:85.8%
    • 特異度:87.6%
    • 感度:80.9%
    • F1スコア※:75.4%

※ F1スコアとは、精度(precision)と再現率(recall)の調和平均を意味します。具体的には、正しい結果をどれだけ網羅的に捕捉しつつ、誤った結果をどれだけ排除できたかを一つの指標で示すものです。この値が高いほど、モデルのバランスが良いと評価されます。

ユーザー分析

  • 対象者:156名(オンラインユーザーのランダム抽出)
  • 60歳以上のユーザーは、血圧モニタリング精度に最も関心を示し、コンプライアンスも高い傾向が見られました。

考察

この研究は、多機能スマートウォッチが高精度の血圧モニタリングを可能にすることを示しました。特に、休止時および動的な血圧測定の精度が高く、24時間のサーカディアンリズムのモニタリングや異常血圧のリアルタイムアラート機能が臨床的に有用であることが明らかになりました。

また、ユーザーのフィードバックから、デバイスの簡便性が高齢者の健康管理において大きな利点となることが示されました。さらに、非侵襲的で使いやすい特性により、医療費削減や日常的な健康管理の向上が期待されます。


結論

HUAWEI WATCH Dは、従来の血圧測定機器と比較して優れた精度と利便性を提供することが実証されました。このデバイスは、高血圧スクリーニングや日常的な健康管理の新しいプラットフォームとしての可能性を秘めています。今後の改良により、さらなる臨床応用や個別化医療への貢献が期待されます。


参考文献

Li YI, LV ZH, HU SY, et al. Validating the accuracy of a multifunctional smartwatch sphygmomanometer to monitor blood pressure. J Geriatr Cardiol. 2022; 19(11):843-852. DOI: 10.11909/j.issn.1671-5411.2022.11.004

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