血圧測定可能なスマートウォッチHUAWEI WATCH Dの検証研究

Digital Health

背景

高血圧は全世界で10億人以上が影響を受け、年間1000万人以上の死亡原因とされています。正確な血圧測定はその管理において不可欠であり、標準化された手順と認証されたデバイスが求められます。近年、オフィス外での血圧測定の有用性が注目されており、特に自己測定によるデータの再現性が高いこと、隠れ高血圧を検出できる可能性があること、服薬アドヒアランスの向上につながることが報告されています。

一方、日中のストレスが血圧を上昇させることが知られていますが、従来の家庭用測定ではこうした変動を見落とす可能性があります。そのため、日中や仕事場での測定が可能なポータブルデバイスが求められており、このニーズに応える形でHUAWEI WATCHが開発されました。


研究の概要と目的

本研究は、HUAWEI WATCHによる血圧測定が「ANSI/AAMI/ISO 81060-2:2018」ガイドラインに基づき、その正確性を検証することを目的としました。このガイドラインは血圧計の臨床的検証において厳格な基準を提供し、以下の2つの基準を満たすことを求めています:

  1. 測定値と基準値の平均差が5 mmHg以内であり、標準偏差が8 mmHg以内。
  2. 平均値差の標準偏差が特定の閾値内。

方法

対象

参加者85名(平均年齢48±18歳、男性62.4%)が研究に参加しました。参加者の平均身長は169.9±8.0 cm、平均体重62.8±13.7 kgで、左手首周囲長は平均162.13±15.64 mm(範囲130–197 mm)でした。

デバイスの特徴と測定方法

HUAWEI WATCHは、マイクロポンプと着脱可能なカフを備えたオシロメトリック法に基づく血圧計測機能を有します。測定範囲は収縮期血圧(SBP)が60–230 mmHg、拡張期血圧(DBP)が40–160 mmHgです。手首周囲長13–20 cmに対応するカフが付属しており、従来のデバイスと比べて幅広い適用範囲を持ちます。
測定は安静時に実施され、左手首を心臓の高さに保つことで精度を確保しました。基準値は水銀血圧計を用いて2名の独立した観測者によって測定されました。

統計分析

測定データは、ANSI/AAMI/ISO 81060-2:2018の2つの基準で評価されました:

  1. 基準1:試験測定値と基準測定値の平均差が±5 mmHg以内、標準偏差(SD)が±8 mmHg以内。
  2. 基準2:平均差のSDがガイドラインで指定された閾値内であること。

結果

HUAWEI WATCHは両基準を満たし、血圧測定の正確性が確認されました。

  • 基準1:SBPとDBPの平均差はそれぞれ-0.25±5.62 mmHg、-1.33±6.81 mmHg。
  • 基準2:SBPとDBPの平均差はそれぞれ-0.25±5.00 mmHg、-1.33±6.31 mmHg。

これらの結果は、ガイドラインで要求される精度要件を大きく上回るものでした。また、Bland-Altmanプロットは測定の偏りが極めて少ないことを示し、限界値内に大部分の測定が収まっていることが確認されました。。


意義と課題

革新性

HUAWEI WATCHは、日常生活における血圧測定を手軽に行える点で、従来のデバイスと一線を画します。特に、職場での測定が可能な点は、日中の血圧変動を把握するための重要な進歩です。従来の水銀血圧計や家庭用モニターに比べ、HUAWEI WATCHは携帯性に優れ、頻回な測定による血圧管理の精度向上に貢献します。

従来のOmron HEMシリーズのウォッチ型血圧計と比較して、HUAWEI WATCHは手首周囲長への対応範囲が広く、多様な人々に適用可能です。また、SBPとDBPの測定誤差がOmron製品よりも小さいことから、精度面でも優れています。

課題

本研究では、測定が左手首を心臓レベルに配置した条件で行われており、他の条件での検証が必要です。また、アルゴリズムの詳細は非公開であり、その透明性が将来的な課題となる可能性があります。


結論

本研究により、HUAWEI WATCHは血圧自己測定において正確性と利便性を兼ね備えたデバイスであることが示されました。特に、日中の血圧変動や職場環境での測定を可能にする点で、現代社会のニーズに応える技術革新の一例と言えます。


参考文献

Wang L, Xian H, Guo J, Li W, Wang J, Chen Q, Fu X, Li H, Chen Q, Zhang W, Chen Y. A novel blood pressure monitoring technique by smart HUAWEI WATCH: A validation study according to the ANSI/AAMI/ISO 81060-2:2018 guidelines. Front Cardiovasc Med. 2022;9:923655. doi:10.3389/fcvm.2022.923655.

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