ウェルビーイングを高めたければ犬を飼え

ポジティブ心理学

駒沢公園といえば犬。

ストレスを緩和する、主観的幸福感を向上させる、その結果自律神経バランスを整える方法としてペットを飼う、触れ合うことが選択肢として挙げられます。

駒沢公園といえば犬。

犬といえば駒沢公園。

駒沢公園にはドッグランの設備があったり、公園周辺には犬同伴OKの飲食店やペット用品店も多いです。犬の散歩をしている人も多いです。

・犬は人間の感情に敏感。
( Biol Lett. (2016) 12:20150883. )

・犬は人間の社会的なジェスチャーに敏感。
( Science. (2002) 298:1634–6. )

・犬は視線などの合図を使って人間とコミュニケーションをとることができる。
Curr Biol. (2003) 13:763–6.)

・犬は、人間と(赤ん坊と親のような)濃厚な愛着関係を築くことができる。
Psychol Res Behav Manag. (2015) 8:71. )

と言うように、犬は人間のパートナーとして特別な存在と言えるのかもしれません。(布施はどちらかと言うと猫派なのですが笑)

ここでは主に犬に焦点を当ててその医学的な恩恵をご紹介しましょう。

犬とのふれあいの心理学的影響

犬を飼ったり、犬と触れ合うことで様々な心理学的な好影響が生じることが研究により示されています。


・犬を飼う(長期的な介入)によって、生涯にわたってポジティブな心理的状態と関連している。
(Anthrozoös. (2019) 32:183–207. )

・犬を飼うことは、人生の満足度や幸福度の向上につながる。
Anthrozoös. (2016) 29:283–96.)

・犬が判断を伴わない社会的支援(non-judgmental social support) となる。
(. J Behav Med. (2013)37:1–8. )

・ポジティブな感情を向上させる。
(Front Psychol. (2018) 9:1627.)

・心を落ち着かせる存在となる。
(J Clin Psychol. (2017) 73:761–84. )。

・犬は安全性、地に足がついたような心地よさを感じさせる。
(Soc Anim. (2005) 13:275–96. )


・ペットの犬がそばにいると子供は,一人のとき( Soc Dev. (2018) 27:34–44. ),親がいるとき(Soc Dev. (2016) 26:382–401. ),ぬいぐるみの犬がいるとき(J Clin Child Adolesc Psychol. (2020) 49:535–48. )に比べて,ストレスのかかる作業の際に知覚されるストレスが低く,ポジティブな感情を示す。

・短期的なストレス状況下では、犬とのふれあいにより、安らぎやポジティブ感覚が得られ、気晴らしにもなる。ストレスに対する感情のコントロールに影響を与え、不安や苦痛を軽減する。
(J Clin Psychol. (2017) 73:761–84.)

・犬はモチベーションの源になりえる。犬を飼っている人は、日常生活の規律を遵守する可能性が高い。
J Vet Med Educ. (2008) 35:487–95. )
→ 犬の散歩のために朝早く起きるなど、、

・盲導犬など、特別な訓練を受けた補助犬と一緒に生活することは、障害者の心理的、感情的機能の向上と関連している。
(PLoS ONE. (2020) 15:e0243302.)

・心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神障害を持つ人にとって、精神科の補助犬を飼うことは、PTSDの症状の軽減、うつや不安の軽減、生活の質の向上に関連する。
Nurse Educ Today. (2016) 47:43–50.)

・ASDやADHDの子どもたちの中には、犬が心を落ち着かせ、ポジティブな存在となり(J Alternative Comp Med. (2018) 24:238–42.)、不安を軽減し(Anthrozoös. (2015) 28:611–24.)、問題行動を改善しうる( Psychoneuroendocrinology. (2010) 35:1187–93.)。

犬とのふれあいの生物学的影響

● 内分泌的影響

・犬がいることで、ストレスホルモンと言われるコルチゾールやその他、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、オキシトシンといったホルモンに好影響を与え、ストレス軽減効果が示唆される。
Front Psychol. (2012) 3:234.)( Vet J. (2003) 165:296–301. ))

・友好的な犬によるサポートは、友好的な人間によるサポートに比べて、コルチゾールレベルの有意な低下と関連。
( Anthrozoös.(2011) 24:4, 349-368)

・子供がストレスのかかる作業の前に犬を撫でる時間が長いほど、コルチゾールの減少量が大きくなる。
(Front Psychol. (2012) 3:352.)

・撫でる、話すなどの犬と飼い主のポジティブな相互作用は、飼い主と犬の両方のオキシトシンレベルを上昇させる。
Front Psychol. (2012) 3:234.)

・ポジティブな犬とのふれあいが心理生理学的な効果をもたらす一つのメカニズムは、オキシトシンの分泌である。オキシトシンは、ストレス反応やコルチゾールの分泌を抑制するだけでなく、感情、信頼、絆にも関与している。オキシトシンシステムは、人間と犬の相互作用に関わる主要なメカニズム経路であるという仮説が立てられている。
(Animals. (2019) 9:792.)

● 自律神経的影響

・犬とのふれあいが、血圧、心拍数、心拍変動といった自律神経指標に好影響を与えたる。
Front Psychol. (2012) 3:234.)

・子供の血圧は、読書中や休息中に子供のそばに犬がずっといると、そうでない場合より低かった。
J. Nerv. Ment. Dis.(1983) 171, 461–464)

・学生の血圧は、犬を撫でているときの方が、おしゃべりや読書をしているときよりも有意に低かった。
J. Delta Soc. (1985)2, 20–27)

・心不全で入院している成人を対象に、犬を連れた人が12分間訪問すると、人だけで訪問した場合に比べて、訪問中および訪問後の収縮期肺動脈圧が大きく低下した。(心不全の病状が軽減したとい意味です)
(J. Crit. Care (2007) 16, 575–5857)

・健康な高齢者が見慣れない犬と一緒に30分間歩いた場合の心拍変動は、一人で歩いているときよりも有意に高かった。
Med. J. Aust.(2006 184, 60–63)
(一般的に、心拍変動が大きいということは、リラックスした状態であり、副交感神経の活動が活発になっていることを示します。)

・自宅で自分の犬を撫でているときの方が、音読しているときよりも血圧が有意に低い。
( Psychol. Rep. (1986)58, 21–22)

飼い犬を3分間撫でるだけで、55分後の心拍数が低下することを示したが、犬を撫でていない対照群ではそのような反応は見られなかった。
Anthrozoos (2011)24, 301–316)

犬とのふれあいの社会的影響

・犬は、直接的な社会的支援(J. Neurosci.(2005) 25, 11489–11493)や愛着の源(Nature(2005) 435, 673–676)となることで、人付き合い、社会的・精神的健康の向上に寄与する。

・犬を飼うことで、短期的および長期的な孤独感が減少する。
(Anthrozoos (2003) 16, 147–159)。

・他者との社会的相互作用を促進する。
・公共の場で犬を連れていると、社会的相互作用を受ける頻度が高くなり( Anthrozoös.(2000)13:1, 43-47,)、社会的承認(例:友好的な視線、笑顔( J. Nurs. Res. (2002) 24, 657–670))が得られる。

・犬は社会的な接触や交流を助長し、ペットを飼っている人は、ペットを飼っていない人に比べて、親しみやすく、隣人との交流も多い。
(Soc Sci Med. (2005) 61:1159–73.)

犬とのふれあいの身体的影響

・犬を飼うことは身体活動レベルの向上(おそらく犬の散歩に関連している)と関連し、心血管疾患、脳卒中、および全原因死亡のリスクを減少させる。
(Animal-Assisted Therapy: Theoretical Foundations and Guidelines for Practice. New York, NY: Academic Press. (2019). p. 80–93. )

・300万人以上を対象とした10件の研究のメタ解析論文において、ペットの犬を飼うことは、心血管疾患による死亡リスク31%減少と関連。
( Circ Cardiovasc Qual Outcomes. (2019) 12:e005554.)

・動物関連の微生物をペットの犬と共有することで、人間の健康に長期的な影響を与えることを示唆する研究もある(.Pets as Sentinels, Forecasters and Promoters of Human Health. Springer; (2020). p. 245–67. )

・ペットの犬との同居が子供のアレルギー(Pediatr Aller Immunol. (2002) 13:334–41. )や免疫系の発達(Clin Exp Allergy. (2008) 38:1635–43. )に有益である。

まとめ

このように、犬を飼うことで我々人間は心理的、身体的、社会的、生物学的な様々な恩恵を受けることが示されているのです。これらの要素は独立しているわけではなく互いに複雑に絡み合って我々は享受できるのです。

すごいですねー!幸福感を高めて、ストレス軽減し、自律神経バランスを整え、そして心臓病リスクも軽減してくれるのです。ミラクルドラッグ、、いやミラクルドッグですね。

「犬を飼う」ことはなかなか難しいと言う方もいらっしゃるでしょう。飼い犬でなくても公園に散歩に来ている犬とごく短時間のふれあいでもまずは良いかもしれません。また、犬でなくても飼うことができる他の動物でも良いかもしれません。ロボット犬でもある程度代替になるかもしれません。

日々ストレスを感じている方、自律神経バランスが崩れていて心身の調子が今一つと感じていらっしゃる方、可能な範囲での動物とのふれあい、ペットとのふれあい、犬とのふれあい、試してみてはいかがでしょう。

【参考文献】

Gee NR, Rodriguez KE, Fine AH, Trammell JP. Dogs Supporting Human Health and Well-Being: A Biopsychosocial Approach. Front Vet Sci. 2021 Mar 30;8:630465. doi: 10.3389/fvets.2021.630465. PMID: 33860004; PMCID: PMC8042315.

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