「環境」は多くの人に、そして永続的に良き影響を与える。

生活環境

運動における「環境」

運動をする上で、「環境」はとても重要です。

さて、この論文。

Physical activity in relation to urban environments in 14 cities worldwide: a cross-sectional studyLancet 2016; 387: 2207–17)

運動不足による死亡者は、世界中で毎年500万人いると推測されています。都市環境整備によりこれを軽減できないか?という疑問に対し、「環境と身体活動」の関連について調査しました。

5大陸10か国、14都市の6,822人が対象の国際的な大規模な横断研究です。身体活動はスマートウォッチのような加速度計を装着して調べています。彼らの身体活動の程度と、居住環境(環境因子)の関連を調べました。

身体活動を促進したもの

結果、以下の環境因子が、身体活動を促進していました。

・ 住民の居住密度
・ 交差点の密度
・ 公共交通機関の密度
・ 公園の密度

つまり、住民が近所にいれば、交流すべく歩いたり移動する活動が多くなります。

交差点の密度も、それだけ道路網が整備されていることで移動を促進します。

公共交通機関が発達すると、バスや電車に乗ることで、歩行しなくなると思いがちですが、むしろ自動車に頼らなくなることで身体活動が促進されます。

公園は、散歩やその他リクリエーションを促しますし、また、バスなどの停留所や発着地点になっていることも多く、身体活動を促進します。

日本においても、車社会の地方の人よりも、公共交通機関が発達している東京など都市部の人の方が身体活動が高い傾向があります。

環境因子の身体活動促進効果

上記の地域の環境因子によりどのくらいの身体活動促進が見積もられるかというと、

中等度以上の強度の身体活動68-89分/週

ほどです。

心臓病予防等を目的として、150分/週以上の中等度身体活動が推奨されていますので、その推奨の実に45-59%の身体活動が促されることになります。

ちなみに、中等度とは概ね3-6METsほどに該当します。

出典:健康づくりのための運動指針2006

そして、このような環境因子の良いところは、多くの人々に、そして長期にわたって良き影響を与えることです。

「運動をしよう」とか、「ダイエットしよう」とか、我々個々のごく短期間の脆い決意とは大きく異なります。

これから都市開発をする国や街は、そのようなことを意識したまちづくりをすることが重要ですし、既存の街であっても、様々な「環境整備」で住民の健やかな生活に大きな影響を与え得るわけです。

駒沢は緑豊かで広大な公園があり、運動をするには最高に恵まれた地域です。

【参考文献】

Sallis JF, Cerin E, Conway TL, Adams MA, Frank LD, Pratt M, Salvo D, Schipperijn J, Smith G, Cain KL, Davey R, Kerr J, Lai PC, Mitáš J, Reis R, Sarmiento OL, Schofield G, Troelsen J, Van Dyck D, De Bourdeaudhuij I, Owen N. Physical activity in relation to urban environments in 14 cities worldwide: a cross-sectional study. Lancet. 2016 May 28;387(10034):2207-17. doi: 10.1016/S0140-6736(15)01284-2. Epub 2016 Apr 1. Erratum in: Lancet. 2016 May 28;387(10034):2198. PMID: 27045735; PMCID: PMC10833440.

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