心臓血管

心臓血管

恐怖は本当に「血を凍らせる」のか:ホラー映画と凝固因子VIII上昇の科学

序論:言葉と科学の接点 「血が凍るような恐怖」という表現は、英語の bloodcurdling をはじめ、フランス語の à vous glacer le sang、ドイツ語の das blut in den Adern erstarrt な...
心臓血管

30代のBMI、血圧、血糖、コレステロール、喫煙、身体活動が中年期の心腎疾患に及ぼす影響

はじめに 心血管疾患(CVD)と慢性腎臓病(CKD)は世界的に主要な死亡原因であり、両者は病態生理的にも密接に関連しています。高血圧、糖代謝異常、脂質異常、喫煙などの危険因子は、血管内皮障害や炎症反応を介して心腎連関を悪化させ、比較的若年期...
心臓血管

静脈血栓塞栓症の診断の遅延とその要因、死亡リスク 

序論 静脈血栓塞栓症(VTE: venous thromboembolism)は、肺塞栓症(PE)や深部静脈血栓症(DVT)を含む疾患群であり、米国では年間30万〜60万人に発症すると推定されています。VTEは適切な抗凝固療法を行えば予後改...
心拍/不整脈

私たちが宇宙を旅する未来は、もう目前に迫っている!宇宙飛行と心血管系の生理変化

はじめに 有人宇宙探査は、かつて国家主導の壮大なプロジェクトでしたが、近年は民間企業の参入により新たな局面を迎えています。月面滞在や火星探査といった長期宇宙滞在が現実味を帯びるなかで、最も大きな課題の一つが人体への影響です。特に心血管系は重...
心臓血管

救急車の接触事故により急性心筋梗塞患者の搬送が遅れ不幸な転機を辿った事例

2025年8月9日、循環器内科医として大変気になる事例、報道がありました。 病院到着20分遅れ搬送男性死亡 救急車が接触事故、愛知・小牧(共同通信) 愛知県小牧市消防本部は9日、胸の痛みを訴えた70代男性患者を搬送していた救急車が、トラック...
がん、悪性腫瘍

がんと心血管疾患:共通のリスク因子と統合的予防戦略

はじめに がんと心血管疾患(CVD)は、世界的な死亡の半分以上を占める二大疾患です。かつては別々の領域で論じられてきましたが、近年の知見は両者が深く絡み合い、互いに進展を促す「双方向的関係」を持つことを示しています。加齢、喫煙、肥満、糖尿病...
心臓血管

プラスチック添加物と心血管疾患:見過ごされてきた地球規模の脅威

はじめに プラスチックに含まれる化学添加物の安全性は、ここ数十年にわたり議論されてきました。その中でもジ(2-エチルヘキシル)フタレート(Di(2-ethylhexyl)phthalate); DEHP)(フタル酸ジエチルヘキシル)は、柔軟...
心臓血管

僧帽弁逸脱症(Mitral Valve Prolapse: MVP)の有病率、進行率、臨床的転帰

はじめに 僧帽弁逸脱症(Mitral Valve Prolapse: MVP)は、左室収縮期に一方または両方の僧帽弁尖が左心房方向へ突出する構造的異常であり、僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Regurgitation: MR)の主要な原因の...
心拍/不整脈

左脚ブロック(LBBB)と心不全リスク

なぜ左脚ブロック(LBBB)が問題か LBBBは心不全(HF)と低左室駆出率(LVEF)を有する患者で死亡率上昇と結びつき、再同期療法(CRT)が有効であることはよく知られています。一方で、無症候の地域在住者で偶発的に見つかるLBBBが、そ...
Digital Health

非侵襲的な肺動脈楔入圧(PCWP)推定技術の革新:ウェアラブルセンサーとAIを活用した心不全管理

はじめに:心不全管理の新たな地平を開く技術 心不全(HF)の臨床管理において、体液貯留やうっ血の評価は極めて重要な要素です。特に、肺動脈楔入圧(PCWP)は、左心系の充満圧を反映する信頼性の高い指標とされており、心不全増悪の早期発見や治療調...