「睡眠不足」と「睡眠障害」、脳への影響はどう違う?やさしく解説。

中枢神経・脳

はじめに:眠れない夜の先にあるもの

夜なかなか寝つけない、不安で何度も目が覚める。そんな「睡眠の悩み」を抱えたことはありませんか?

「たかが睡眠」と思いがちですが、最近の研究で睡眠の質や量が脳に与える影響はとても大きいことがわかってきました。そして今回、ドイツやイギリスの研究者チームが「睡眠障害」と「睡眠不足」とで、脳の変化が全く違うことを世界で初めて明らかにしました。

詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。


睡眠障害と睡眠不足、どう違う?

まず、言葉の違いを整理しましょう。

  • 睡眠障害:不眠症や睡眠時無呼吸症候群(いびきと呼吸が止まる)、むずむず脚症候群など、医学的に診断される状態。長期間にわたって睡眠の質が落ちていることが特徴です。
  • 睡眠不足:一時的に十分な睡眠がとれなかった状態。徹夜や仕事・育児・SNSの影響などで起こります。

一見似ているように思えますが、脳への影響はまったく違うのです。


睡眠障害では「感情と記憶の中枢」がダメージを受ける

今回の研究では、95件の睡眠障害に関する脳画像研究をまとめて解析しました。その結果、脳の2つの重要な部分で変化が起きていることがわかりました。

前部帯状皮質

ここは、やる気や感情のコントロールに関わる場所です。報酬への反応や、考える力とも関係しています。

→ 睡眠障害のある人は、この部分の活動や体積が減っていることが多いとわかりました。

右の扁桃体と海馬

ここは、不安や恐怖の感情を処理したり、記憶を保存する働きがあります。

→ 睡眠障害があると、ここが逆に活発になりすぎているようです。つまり、「記憶や感情に敏感になりすぎて、休まらない」状態とも言えます。


睡眠不足では「体の司令塔・視床」に変化が

次に、45件の「健康な人が睡眠不足になったとき」の研究も調べました。すると、まったく違う脳の部分が関わっていたのです。

視床

視床は、感覚や運動の情報を脳全体に中継する「司令塔」です。目覚めているかどうか、体温や痛みをどう感じるかもここが担当しています。

→ 睡眠不足では、この視床が活動的になりすぎていました。つまり、無理して起き続けるために、視床がフル回転しているのです。


脳の変化は全然違う=対処法も違う!

この研究が伝えている大切なメッセージは、「睡眠障害」と「睡眠不足」は似ているようでまったく違う、ということです。

  • 睡眠障害の人は、感情や記憶を司る脳に変化があり、不安や気分の波が強くなりやすい。
  • 睡眠不足の人は、一時的に司令塔(視床)を酷使して起きている状態で、日中の注意力や体の感覚が乱れます。

ですから、「昨日寝てないから今日は不安で…」というとき、それが慢性化しているのか、一時的なのかを見極めることがとても大切です。


明日からできる「脳にやさしい眠り方」

この研究から学べることは、ただ「早く寝よう」というだけではありません。あなたの脳を守るために、次のようなポイントを実践してみてください。

  1. 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
  2. ベッドは「眠る場所」だけにして、スマホは外に置く
  3. 寝る前に、心がホッとする習慣(読書や深呼吸)を取り入れる
  4. 眠れない状態が何週間も続くなら、専門医に相談する

おわりに:眠りは「心のセンサー」

眠りの質は、心や体の健康状態を映す鏡です。今回の研究によって、「眠れない」という一見ささいな症状が、脳の中ではどれだけ深刻な変化を起こしているかが明らかになりました。

あなたやあなたの大切な人が「眠れない」と感じたとき、それは「心のセンサー」がSOSを出しているのかもしれません。どうか無視せず、やさしく耳を傾けてください。

参考文献

Reimann GM, et al. Distinct Convergent Brain Alterations in Sleep Disorders and Sleep Deprivation: A Meta-Analysis. JAMA Psychiatry. 2025; doi:10.1001/jamapsychiatry.2025.0488


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