免疫と睡眠とワクチンと

睡眠

風邪っぽい時、なんとなく体調がすぐれない時、、、そんな時は葛根湯などの薬やビタミン剤、サプリを飲んだり、にんにく注射を打ったり、、、と様々な対策を講じる方もいらっしゃると思いますが、なんといっても「寝る」ことが重要です。
睡眠は身体への様々な好影響を及ぼしますが、その1つが免疫への作用です。

睡眠時間が短いと風邪をひきやすい

睡眠不足の人は風邪をひきやすいことを示した論文は複数あります。

例えば米国の164人(18-55歳)を対象とした介入研究(Sleep. 2015 Sep 1;38(9):1353-9. )です。

7日間連続で睡眠時間などのデータを測定し、その後風邪のウイルスの1つであるライノウイルスを含む液体を鼻に点鼻しました。

5日間モニタリングしたところ、睡眠時間が7時間以上の人が最も風邪を発症しづらく、睡眠時間が短くなるにつれ風邪を発症しやすくなりました。最も睡眠時間が短い群である5時間未満の人たちが最も風邪を発症するリスクが高いという結果でした。



米国の153人(22-55歳)を対象とした研究もあります(Arch Intern Med. 2009 Jan 12;169(1):62-7.)。

14日間連続で睡眠時間などのデータを測定し、その後風邪のウイルスの1つであるライノウイルスを含む液体を鼻に点鼻しました。

5日間モニタリングしたところ、睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上の人よりも風邪をひく可能性が2.94倍高いという結果でした。また睡眠効率(布団に入っている時間のうち、実際に眠っている時間の割合)が98%以上の高い人に比べ、92%未満の低い人は風邪をひく確率が高率でした。


このように睡眠は「免疫の力」を増強すると考えられます。

睡眠はワクチンの効果を増強させる

ここ数年、世界中で新型コロナワクチン接種が行われ様々な議論が交わされていますが、コロナ以外にも様々なワクチン接種が普及しています。公衆衛生上、我々の健康上、ワクチンは大きな恩恵をもたらしてくれています。

ワクチンを接種することで「抗体」が作られます。このプロセスは、当然「免疫の力」が大きく関与しています。つまり、ワクチン接種の際にしっかりと睡眠を取ることで免疫の力が強化され、抗体産生を促してくれることが期待できます。

実際に、睡眠がワクチンの効果を高めることを示唆する研究は複数あります。

・インフルエンザウイルスワクチン接種 において、睡眠時間が4日間連続で4時間に制限された状態でワクチン接種を受けた人の10日後のIgG抗体価は、そのような睡眠制限のない人の半分以下だった。(JAMA. 2002;288:1471–1472. )

・B型肝炎ワクチン接種において、短時間睡眠は二次抗体反応の低下と臨床的予防の可能性低下と関連していた。(Sleep. 2012;35:1063–1069.)

・A型肝炎ワクチン接種後の夜間に睡眠をとると、睡眠をとらない場合と比較して、ウイルス特異的Tヘルパー細胞が2倍になった。さらに、0-8週目にIFN-γ陽性の免疫細胞の割合が前者で有意に増加していた。(IFN-γは、ウイルスの増殖を阻害し、発病を抑制する作用がある。)(J Immunol. 2011;187:283–290.)

・2009年のH1N1インフルエンザウイルスに対するワクチン接種後の夜の睡眠不足は、男性では初期のH1N1特異的抗体産生を減少させる。(BMC Immunol. 2012;13:1.)

・夜間の睡眠は、抗炎症性サイトカインであるIL-10の活性を低下させ、炎症性サイトカインであるIL-12の活性を上昇させるなど、適応免疫反応を促進することが示されている。(Arch Intern Med. 2006;166:1695–1700. )

・健康若年成人を対象にA型肝炎ワクチン接種後の夜間の睡眠不足の影響を調べた研究では、一部の人が20週目に臨床的に有意な抗体レベルに到達せず、追加の接種が必要となった。(J Immunol. 2011 Jul 1;187(1):283-90. )


複数の種類のワクチンで、睡眠と抗体産生の関連性が示されており、おそらくこれは事実だと思います。

すやすや-ワクチン-すやすやすや

近年でも新たなワクチンが次々出てきています。
例えば、帯状疱疹に対する非常に優れたワクチンが開発され、ここ1-2年で多くの自治体で費用助成がなされるようになりました。

今後も、ワクチンを打つ方は多いと思います。
是非とも、ワクチン前、そしてワクチン後の睡眠をしっかりと(7-8時間/日)を取ることを強くお勧めいたします。

すやすや-ワクチン-すやすやすや!です。

ワクチン打たない人も、日頃の睡眠をしっかりとって免疫力を高めておきましょう。

【参考文献】

・Prather AA, Janicki-Deverts D, Hall MH, Cohen S. Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. Sleep. 2015 Sep 1;38(9):1353-9. doi: 10.5665/sleep.4968. PMID: 26118561; PMCID: PMC4531403.

・Cohen S, Doyle WJ, Alper CM, Janicki-Deverts D, Turner RB. Sleep habits and susceptibility to the common cold. Arch Intern Med. 2009 Jan 12;169(1):62-7. doi: 10.1001/archinternmed.2008.505. PMID: 19139325; PMCID: PMC2629403.

・Besedovsky L, Lange T, Haack M. The Sleep-Immune Crosstalk in Health and Disease. Physiol Rev. 2019 Jul 1;99(3):1325-1380. doi: 10.1152/physrev.00010.2018. PMID: 30920354; PMCID: PMC6689741.

・Benedict C, Cedernaes J. Could a good night’s sleep improve COVID-19 vaccine efficacy? Lancet Respir Med. 2021 May;9(5):447-448. doi: 10.1016/S2213-2600(21)00126-0. Epub 2021 Mar 12. PMID: 33721558; PMCID: PMC7954467.

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