1. ED(勃起不全)は循環器疾患
以前から申し上げていますが、「EDは循環器疾患」の側面があります。心臓とEDはとても関係が深いのです。
2. 低用量タダラフィル1日1回服用
しかもEDは、男性のウェルビーイングに大きく影響します。
当クリニックでは、ED治療薬であるタダラフィルの低用量(5mg)1日1回定期内服をしばしば提案しています。EDにも、ウェルビーイングにも、心臓血管系にも、良い影響が期待できます。
3. タダラフィルを服用していると効かなくなる?
タダラフィル。ED(勃起不全)治療の一翼を担う、この薬に頼る生活は多くの人にとって希望の光となっています。しかも、多くの副次的効果が期待できる。
しかし、服用していたら効果が薄れた気がする、、、との意見を耳にすることがあります。
身体が慣れてしまって、その効果が薄れた?
服用しているにもかかわらず、期待していた効果が得られなくなった。そんな事態が生ずるとすれば――不安を覚えずにはいられません。
4. 薬効減弱のメカニズム:耐性とは?
耐性(tachyphylaxis)は、多くの薬剤で見られる現象です。特定の薬を繰り返し使用することで、体がその薬に慣れ、効果が減少することを指します。では、タダラフィルをはじめとするPDE5阻害薬はどうでしょうか?
理論的には、PDE5阻害薬の長期使用が「PDE5プロモーターの持続的な活性化」を引き起こし、結果的に「PDE(ホスホジエステラーゼ)」の発現がアップレギュレーション(増加)する可能性があると考えられています。簡単に言えば、タダラフィルがPDE5をブロックし続けると、体は「もっとPDE5を作れ!」と命令を出し始める可能性があるのです。この現象は、細胞レベルの適応反応であり、他の薬物でも類似の事例が知られています。
タダラフィルが持続的に効果を発揮するには、cGMP(環状グアノシン一リン酸)を増やす必要がありますが、PDE5の増加によりcGMPの分解が促進され、結果的に薬の効果が弱まる(=勃起しづらくなる)可能性があります。
理論的には、このメカニズムが「耐性」の一因となり得ると考えられています。
5. 臨床的に、タダラフィルの耐性は生じるのか?
では、この「耐性」は臨床的にどの程度生じるものなのでしょうか?
朗報です(笑)!
現時点では、耐性が臨床的に問題になるという明確なエビデンスは限られています。むしろ、多くの患者は長期にわたり安定した効果を得ているという報告が大多数を占めています。
例えば、タダラフィルの1年間の継続使用でも勃起効果の減弱は見られず、しかも内皮機能の改善効果が示唆された研究もあります。
一部の動物実験や細胞実験のデータは耐性の可能性を示唆しており、今後も更なる研究が必要と考えられます。
6. 現時点での結論
理論的にはタダラフィルの長期使用により耐性が生じることはあり得ますが、臨床的にはその可能性は極めて低いものと考えられます。
必要性を感じる方であれば、長期連用を躊躇する必要はありません。
もしタダラフィルを服用していて、その効果が薄れたように感じたとしても、すぐに耐性を疑ったり、不安に陥る必要はありません。
耐性よりもむしろ、食事内容や体調、ストレスなど心理的要因が関与している可能性があります。ご年配の方においては、加齢現象という可能性ももちろんあり得ます。
医師と相談し、再評価することで問題解決の糸口が見つかることが期待できます。
参考文献
・Frajese GV, Pozzi F, Frajese G. Tadalafil in the treatment of erectile dysfunction; an overview of the clinical evidence. Clin Interv Aging. 2006;1(4):439-49. doi: 10.2147/ciia.2006.1.4.439. PMID: 18046921; PMCID: PMC2699638.
・Pyrgidis N, Mykoniatis I, Haidich AB, Tirta M, Talimtzi P, Kalyvianakis D, Ouranidis A, Hatzichristou D. The Effect of Phosphodiesterase-type 5 Inhibitors on Erectile Function: An Overview of Systematic Reviews. Front Pharmacol. 2021 Sep 7;12:735708. doi: 10.3389/fphar.2021.735708. PMID: 34557099; PMCID: PMC8452927.
・Amano T, Earle C, Imao T, Matsumoto Y, Kishikage T. Administration of daily 5 mg tadalafil improves endothelial function in patients with benign prostatic hyperplasia. Aging Male. 2018 Mar;21(1):77-82. doi: 10.1080/13685538.2017.1367922. Epub 2017 Aug 22. PMID: 28830281.