とりあえず「安静」にしているときの心拍数の基準はいろいろです。
某社の心電図の自動読影システム
某社の心電図の自動読影システムですと、正常の心拍数は60-99/分です。
救急医療の現場
救急医療の現場では、
心拍数60/分未満を「徐脈」、
心拍数100/分以上を「頻脈」と称し、異常と見なします。
逆に言えば、心拍がやや速めでも、
心拍数100/分を超えていなければ、脈の速さに関しては重要視しません。
この60や100と言った心拍数の正常値の根拠は、あまりはっきりしません。
日本人間ドック学会
日本人間ドック学会では2023年度版心電図検診判定マニュアルによると、心拍数の基準は以下のごとくです。
心拍数100/分以上を「洞頻脈」
心拍数 86-99 拍/分を「心拍過多」
心拍数 49 拍/分以下「洞徐脈」
この基準によると、救急医療での基準よりも上限が下がってはいますが、心拍数が85/分でも「正常」ということになります。
安静時心拍数
しかし、以前示したメタ解析のデータ(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26598376)ですと、
安静時心拍数が45/分から10/分上がる毎に、死亡リスクが9%上がります。
つまり、心拍数85/分は36%死亡リスクが高いと言えます。
このメタ解析も含め、心拍数と死亡リスクの関係の様々なデータを総合して考えると、
安静時心拍数は70/分くらいまでが妥当ではないかと考えます。
ちなみに、下限は50/分くらいが目安。
ただし、注意点があります。
救急現場はもちろんですが、普段病院で心電図を記録したり、人間ドックで記録したりするときには、純粋な「安静時」心拍数ではないことが多いと思います。上記論文の「安静時心拍数」の測定方法は、以下の感じ。
【参考文献】
Zhang D, Shen X, Qi X. Resting heart rate and all-cause and cardiovascular mortality in the general population: a meta-analysis. CMAJ. 2016 Feb 16;188(3):E53-E63. doi: 10.1503/cmaj.150535. Epub 2015 Nov 23. PMID: 26598376; PMCID: PMC4754196.